テロワールを構成する諸条件
テロワールとは ブドウの木が栽培される環境のすべてです 具体的には *気候: 年間を通じて乾いているか 雨が多いか *土壌の個性: 砂利質か 肥沃か *畑の位置: 寒暖 雨量 風向き 湿度などはどうか *地形の特徴: 斜面か平地か 陽当たり具合はどうか *人的要素 などが挙げられます <土壌> 土壌は テロワールを検討するうえで最も重要な要素ですが 詳細は既に説明しましたので そちらをご参照ください <立地> 場所 標高 日当たりなどが要因となります 特に日当たりは ブドウの生育にとって重要な要素です @標高 土地の標高が高くなると 一般的には冷涼さが増し その分生育は遅れますが 冷気が斜面の下に流れるため 霜の被害が少なくなるというメリットもあります また標高が高いと 表土が雨風に侵食され下の斜面に流されてしまい 表土下の地層に根がおりやすいのですが こうした状況が 高級ワインには最適といわれています @寒暖差 寒暖差は 高級ワインには重要視されていて ある程度の標高だと 冷涼さを保ちながら日当たりのいい場所というところもあり こうなると高級ワインにとっては最高の環境となります @斜面の向き ブルゴーニュのような丘が連続する産地では 斜面の向きが 日照量や温度に大きな影響をもたらします たとえば 朝に陽の当たる場所では 冷気がある状態で日照があり 夕方に陽の当たる場所では 温度が上昇した中での日照になり ブドウの実の成熟への影響に大きな違いがあるとされます <気象条件> ブドウの品種により 熟す時期が2か月も違うことがあり 畑が立地する場所の気候により 栽培に適した品種が決まります オーストラリア ニュージーランドなどの ニューワールドと呼ばれるブドウ産地では フランスほど土壌を中心に据えていないようで 気候などの外部要因が与える影響が重要と見做されています 特に光合成による糖の生成過程は重要ですから 日照時間が重視されます 気象条件で案外見落とされがちなのが ブドウ畑に吹く風といわれています 穏やかな風は 雨で湿った果実を乾燥させてブドウ畑の衛生を保つという面では優れていますが 受粉を妨げるというデメリットがあります 逆に強い風が続くと ブドウは葉の水分が蒸発してしまうので生育をやめてしまうとされています <テロワールのコンセプトを用いた新たなブドウ栽培地の開発> 最近の中国では 自国内でブドウを栽培しワインを造ることが盛んで 既に世界市場に出回っている中国産ワインもあります 書き手も北京で中国産ワインを飲んで 意外に美味しいのでビックリしたことがありましたが 関係者に聞いたら 中国全土の気象条件などを調べて どの土地でどのブドウ品種を栽培すれば良いか決めて ワイン造りをしているそうで それを聞いてビックリしました でも こうした方法は テロワールのコンセプトの巧みな利用といえるかもしれません これまでにまったくブドウが育てられていないところで 新たにブドウを栽培してワインを造ろうとする場合 その土地の気候データ 土壌のデータが集め その地がそんなブドウの生育に適しているか 事前に検討することができますし 良いワインを造れる確率が高まる可能性があります さすが 中国おそるべしです! <ワインはテロワールだけで決まるのか?> これまで説明したように テロワールを構成するのは 主に自然が関与する項目ですが 造り手の個性や収穫年の特徴も ワインの出来に大きく影響します 同じ畑のブドウを用いて 異なる生産者がワインを造ることもありますが それらを飲み比べしても テロワールというコンセプトを確信させるほどの同一性が見いだせない という意見があり テロワールより作り手の個性の方が重要だとする意見も根強くあります 確かにその通りかもしれません 面白いですね! テロワール批判派からすると それは単なる「土地信仰だ」ということになるのでしょうか? 一方 最近は 現代の栽培・醸造技術を総動員して 本来のブドウの持つ力よりも多くのものを引き出そうとする 新たなワインの造り方があり 「テクニカルワイン」と呼ばれますが これはまさに テロワールのコンセプトとは真逆になります 書き手は テロワールのコンセプトには賛同します 地域の特性を重要視することは大切ですし イタリアで起こったスローフード運動に 通じるものがあると思います でも なんでもそうですが 過度の信仰は 視野を狭くしますし危険な面もある ほどほどのいいとこ取りのテロワールコンセプトが 良いのではないでしょうか?(笑) テロワール論争 ますます面白くなりそうです
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