ニューヨークでアメリカを語る10
前回の話で気になったのが 精神と世界は分離しているとする考え方は 物理学的思考の基本をなす世界観で これこそがアメリカの世界観である という点です なるほど それがアメリカの世界観か 納得できる気がします そんな書き手の思いを察してくれたのか ガブリエルは 作家でニューヨークマガジンの元編集長で アメリカの在り方に危機感を感じているという カート・アンダーセンさんと対話を始めます アンダーセンさんは アメリカ人は それがベストとは限らないのに 理想とする自由をあらゆる人に押しつけている と指摘します ガブリエルは それに応えて ドイツでは「アメリカは終わった」という認識がある もう自由がないと感じている ヒトラーがいた頃のドイツのようなイメージがある と語ります 面白くなりそうですね(笑) 今 アメリカが混迷している理由のひとつは ヨーロッパからアメリカに渡った開拓者が ピュアなプロテスタントだったからで アメリカ人はその精神を引継いで 自分が真実だと感じたものは全てが真実だと信じている 聖書に書いてあることは わざわざ教えてもらわなくても自ら理解できるという 超主観性が アメリカで極限にまで進んだ 1835年に フランスからアメリカを見学しに行ったトクヴィルは これほど熱狂的な信者を見たことがないと語ったそうです アメリカでは そうした極端なプロテスタントが ショービジネスと融合した そして アメリカが強力に推し進めた資本主義は まさに全てがショー化している経済システムで 商品の産生とは見せるためのショーだ また 18~20世紀にかけての アメリカの宗教の最もユニークな部分は ショー的な気質である このようにして ショービジネスは アメリカ社会の全てを取り込んでいて 全てがショービジネスなのがアメリカの特徴である ここニューヨークでは 誰もがフィクションと幻想が織り成す現実に触れているので 人は魅力的だと思う 幻想が織り込まれた文化が可視化されているのは アメリカの美しさでもある アメリカでは 精神 文化に結びつく行為は全て幻想で それは科学的唯物論に支えられている アメリカの主たるイデオロギーは 科学的唯物論で 自然科学的な知のみで体系化された哲学である しかしアメリカには同時に 精神層レベルでのハイレベルな大衆文化がある これが興味深い矛盾だ このように ちょっと揶揄的にアメリカを語るガブリエルに アメリカ人のアンダーセンさんは 冷静に自己分析をします アメリカでは 科学的唯物論に対して キリスト教信仰があり 常に二極化していた だから 実用的で産業と結びついた科学技術の進歩と 空想的で非現実的なものが 常に共存している そして最近は さまざまな面でその境界が見えづらくなっている 科学と宗教 神様と進化 という両極端が 社会の中で並存している アンダーセンさんの自己分析を聞いて ガブリエルはまとめます 現代社会を支配するテクノロジーを築いたシリコンバレーの人たちは SF的世界観により今の世界を作った SF小説には 空想を現実に変える力がある しかし 全てのファンタジーには 良い側面と悪い側面がある テクノロジーは 50年ほど前から制御不能になり始め インターネットの加速により悪化した だから銃乱射事件も起こる アメリカで自由が多くなりすぎているのが 全ての社会の問題の根源である 統治とは 自由を与えすぎるのではなく 自由を与えすぎないようにうまくやることではないか? 人は自由を取り違えたとき 現実から眼をそむけて 幻想の世界に閉じこもる 面白い会話でしたね! 良きにつけ悪しきにつけ アメリカを支えているのはピュアなプロテスタント精神 というのは納得できました だからアメリカで 自然科学も資本主義も強力に推進され 暴走も始まった?(笑) でも どうしてショービジネスと結びついたのかが解らない 最後に自由の問題が出てきたのは 次の話題に展開するためです
高橋医院