尿路結石の解説を続けます

<結石はどのようにして形成されるか?>

尿中で
*シュウ酸カルシウム 
*リン酸カルシウム 
*尿酸
などが飽和状態となると結晶が析出します

結晶核が形成されると
表面に晶質(シュウ酸 リン酸 カルシウム)が付着し
結晶はさらに成長 凝集し
凝集塊をもとに結石が形成されます

微小な結晶や結石は
無症状のうちに絶えず尿中に排泄されますが
これらにさらに晶質や有機物が付着し
腎杯内で無症状のうちにある程度まで成長することがあり
このような結石が排出されるとき
血尿 疼痛などを伴います

尿管結石の形成過程を示した図"


<尿路結石の原因となる疾患>

尿路結石の原因となる疾患を示した図

@腎・泌尿器疾患

*水腎症では腎結石
前立腺肥大症 神経因性膀胱では膀胱結石
がそれぞれ生じやすいとされます

@慢性的に持続する尿路感染

尿素分解酵素を有するグラム陰性桿菌が
尿素からアンモニアを形成し
尿をアルカリ化するため
リン酸マグネシウム アンモニウム リン酸カルシウムが析出しやすく
結石が生じます

@代謝異常

さまざまな代謝異常によって生じ
*高カルシウム尿症
*高シュウ酸尿症
*高尿酸尿症
*低クエン酸尿症
*低マグネシウム尿症
などは 結石形成に大きく関与します

@尿pH(酸性度)

尿のpHの程度は結石形成に大きな影響を及ぼします

尿のpHの程度は結石形成に大きな影響を及ぼすことを示す図

アルカリ尿では
*リン酸カルシウム結石 
*リン酸マグネシウムアンモニウム結石
が形成されやすく

酸性尿では
*尿酸結石
*シスチン結石
が形成されやすくなります

酸性尿 アルカリ性尿で析出しやすい結石の種類をまとめた図

尿のpHとメタボリック症候群 結石形成の関係をまとめた図

@内服している薬剤

使用薬剤が原因で
結石が形成されることもあります

緑内障治療薬であるアセタゾラミド
活性型ビタミンD 尿酸排泄促進剤(プロベネシド)
AIDS治療薬インジナビル
などがあげられます


<危険因子>

@尿量低下(水摂取不足)

尿中の尿酸など 
結石の原因となる物質の濃度が増加し
結石が形成されやすくなります

@持続する尿のpH異常

食事による胃酸分泌が 
反応性に血中重炭酸イオンを増加させ
尿のpHを上昇させ
尿のpHは日内変動が見られます

結石患者 痛風患者さんでは
この尿pHの日内変動が障害されていて
尿のpH異常が持続します

また 動物性高タンパク食は尿のpHを低下させます

@尿中尿酸排泄量の増加

尿中尿酸濃度の上昇により
シュウ酸カルシウムの溶解度が下がり
シュウ酸カルシウム結晶が析出され
結石ができやすくなります

尿中尿酸排泄量の増加すると結石ができやすいことを示す図


<メタボリック症候群としての尿路結石>

尿路結石と動脈硬化の発症には極めて類似点が多く
最近は尿路結石症は
メタボリックシンドロームの一疾患と見做されています

また
メタボリックシンドロームの予防法と
尿路結石症の予防法は ほぼ共通しています

メタボリック症候群では結石が形成しやすいことを示す図・その1

メタボリック症候群では結石が形成しやすいことを示す図・その2

ですから 若い人たちに多い尿路結石の発症は
メタボリックシンドローム発症の警鐘とも
捉えることができます

@BMI 高血圧 CKD との関連

特に高血圧との関連が著明です

@高尿酸血症

プリン体過剰摂取による高尿酸血症は
尿酸結石 シュウ酸カルシウム結石を 
ともに形成促進します

高尿酸血症では結石が起きやすいことを示す図
高尿酸血症ではメタボリック症候群も起きやすいことを示す図

また 尿酸排泄促進薬は
尿中尿酸排泄量の増加により
尿酸結石の形成を促進させます

@肥満 運動不足

男性患者の40.3% 女性患者の24.8%で
肥満 運動不足を認めます

結石形成の促進因子である
*高カルシウム尿症
*高尿酸尿症
*高シュウ酸尿症
の割合は 肥満度と相関します

肥満度が高いと尿中のカルシウム 尿酸 シュウ酸が高値であることを示すグラフ

さらに 
肥満は尿路結石の強力な再発予測因子でもあります

@メタボリック症候群 糖尿病も
 尿酸結石の高リスク群

内臓脂肪の蓄積とインスリン抵抗性が
結石形成に関与します

尿酸の産生過剰
尿糖排泄にともなう尿酸排泄促進
インスリン抵抗性による酸性尿
などが機序として想定されています

内臓脂肪の蓄積とインスリン抵抗性が結石形成に関与することを示す図
インスリン抵抗性が高尿酸血症を誘導することを示す図

@食事の影響

食生活が大きく影響していると考えられ
*総タンパク質・動物性タンパク質・脂肪の摂取過多
*カルシウム摂取量は少なく 牛乳の摂取頻度も少ない
*野菜摂取量は少なく 緑黄色野菜・海藻類の摂取頻度も低い
*甘味飲料水 清涼飲料水の摂取頻度が高い
*夕食中心の食生活(特に動物性タンパク質の摂取)
*夕食から就寝までの時間が短い
*過度の飲酒
などが誘因とされています

食生活の欧米化により結石ができやすいことを示す図

タンパク 脂肪の過剰摂取が結石形成を誘導することを示す図

食生活の改善が結石の予防に有用であることを示す図

結石予防のためには
こうした食生活やライフスタイルの見直しも重要です
高橋医院