遺伝子的な個性ってなんだ?
まえふりがさんざん長くなってしまったSNP 正式名称は Single Nuculeotide Polymorphism その頭文字をとってSNP 日本語に訳すと 一塩基多型 スニップ と発音します これこそが 話題の「個人向け遺伝子検査」で 解析されていることです 前回説明したように ヒトの遺伝情報は DNAの塩基配列によって担われています DNAの塩基配列の99.9%は万人に共通ですが 残りの0.1%は個人によって異なります この違いこそが 個人が有する遺伝子的な個性になります わかりやすく例えると体質ですね では 遺伝子的な個性・体質 の正体は何か? 0.1%の非共通の塩基配列のなかには さまざまな違いがありますが それらの全ての違いが意味を持つわけではありません ある集団 日本人なら日本人 アメリカ人ならアメリカ人の集団において ある特定の塩基配列の違いが 1%以上の頻度で出現しているとき それを「遺伝子多型」と呼んで 意味がある違いと見なします 出現頻度が1%以下の違いは 変異(ミューテーション)とか まれなバリエーションと呼ばれ 意味のない違いとして無視されます 意味がある違い 意味がない違い という言い方は わかりにくいかもしれませんが あまりに稀なものは評価の対象にならないけれど 一定以上の頻度のものは評価の対象になる そんなニュアンスでご理解ください そして意味のある違いである「遺伝子多型」が 存在する結果 遺伝子から作られるタンパク質に変化がみられ それがひとりひとりの姿かたちや能力などの違いとして 目に見える形として表われてくるのです これがまさに遺伝子的な個性・体質の正体です 遺伝子多型には DNAの塩基がどのように変化するかにより 何種類かのタイプがあります *置換:ある塩基が別の種類の塩基に置き換わるタイプ *欠失:1から数十の塩基が失われるタイプ *挿入:1から数十の塩基が入れ込まれるタイプ *繰り返し配列 :いくつかの塩基からなる配列を1単位とする配列が繰り返されるタイプ 繰り返し配列は ・STRP:short tandem repeat polymorphism :2~4個の塩基からなる配列が数回から数十回繰り返されるで マイクロサテライト多型と呼ばれます ・VNTR:variable number of tandem repeat :数個~数十個の塩基からなる配列が繰り返される の2種類あって それぞれの繰り返し回数が個人によって異なります こうしたさまざまな種類の遺伝子多型のなかで 出現頻度が高く 病気の発症進展に関与する可能性が高いとされるのが *上記のマイクロサテライト多型 と *ひとつの塩基が他の種類の塩基に置換されたタイプ で そして ひとつの塩基が 他の種類の塩基に置換されたタイプが SNPです DNAや遺伝子の塩基配列の たったひとつの塩基の種類が異なるだけ このたった一塩基の違いが とても大きな意味を持つのです ふーっ やっとSNPまでたどり着きましたが 前回はちょっと盛りだくさんすぎましたし 今回も聞き馴染みのない単語のオンパレードで 皆さんお腹がいっぱいになられたでしょうから SNPの解説は次回にしましょう 今日のメッセージは *遺伝子的な個性・体質は さまざまなタイプの遺伝子多型により規定され *遺伝子多型の代表選手で 個人向け遺伝子検査で解析されているのがSNPで *それにより 姿かたちや能力などの違いといった目に見える形 として個性や体質が表われてくる ということです ここまで頑張ってお付き合いいただいて ありがとうございました(笑)
高橋医院