中央区・内科・高橋医院の 
食事と健康に関する情報 


食べたいという衝動
視床下部にさまざまな食欲制御因子が作用して
決まることを説明しましたが

数ある食欲制御因子のなかから
これからも様々な場面で登場しそうな
有名スターの横顔を紹介します


<レプチン>

脂肪細胞から分泌される 抑制系の代表選手

レプチンの働き

昔は脂肪細胞は
ただのデブ細胞と思われていましたが
アディポカインと呼ばれる
種々のホルモン様因子を産生していることがわかり
今や生活習慣病の鍵を握る細胞として
重要視されています

大した出世です(笑)

そのアデイポカインの代表選手が レプチン

食欲抑制作用に加え 
エネルギー代謝亢進作用もあるので
ダイエットには重要ですが

なんと肥満したヒトでは
このレプチンがうまく機能しない
「レプチン抵抗性」になっています

レプチン抵抗性の図解

この困った状態は 
高脂肪食ばかり食べていると起こるようで

まさにジャンクフードばかり食べていると
食欲の抑制が効かなくなるということ?


<インクレチン(GLP-1)>

糖尿病治療薬で紹介した
インクレチン 憶えておられますか?

小腸に消化された食べ物が入ってくると 
その刺激で分泌されて
*インスリン分泌を刺激し
*グルカゴン分泌を抑制する
二面性作用がある
有望な血糖降下薬ですが

さらに食欲抑制作用も持っています

GLP-1の食欲への影響の図示

実際にインクレチン製剤で治療している
糖尿病治療薬患者さんは
驚くほど食欲が減るそうですし

欧米では高用量のインクレチン製剤が
肥満治療薬として使用されています

血糖値も食欲も抑える!

まさに抑制系因子のスーパースターになりつつあります


<グレリン>

スーパースターにはライバルも必要
ということで登場するのが
グレリン

胃腸で分泌される
たくさんの種類の消化管ホルモンのなかで
唯一 食欲促進作用を示す異色の存在です

グレリンの作用

胃で分泌され 食欲促進に加え
成長ホルモンの分泌促進 
胃液分泌促進 消化管運動亢進作用
も併せ持っている

末梢から視床下部に食欲促進情報を伝える代表選手です

炭水化物が多い食事を食べると
グレリンはさらに分泌し

タンパク質の多い食事では
グレリンの分泌が抑制されるとされています

インクレチンとグレリンは
ともに脳神経の迷走神経求心路(末梢から中枢に向かう経路)の
情報伝達に影響します

インクレチンは情報伝達を活性化し 
グレリンは抑制する

このように
インクレチンとグレリンは
まさに正反対の作用を有するライバル関係にあるわけです

グレリンとレプチンの相反する作用
さて 興味深いのは
肥満なヒトでは食欲制御はどうなっているか?
ということですが

最近の研究で
肥満になると食欲を制御する視床下部で
慢性炎症が起きている
ことがわかってきました

ラットに高脂肪食を与え続けると
約1週間で視床下部の食欲制御に関わる弓状核という部位が
炎症を起こします

炎症を起こしている視床下部の写真

これは 
肥満により細胞内の小胞体という部分が
ストレス状態となり
炎症が引き起こされるのが原因
と考えられています

小胞体ストレスに関しては 
いずれ稿を改めて解説します

またレプチンの項で説明したように
食欲を抑制するレプチンに対する抵抗性も
生じてきます


つまり 肥満になると

食欲制御中枢の異常 
食欲制御因子の異常
が生じて

ますます食欲が増えて エネルギー消費量が減り
その結果として更に肥満が増す

という悪循環が形成されてしまうのです

実際に肥満のヒトでも
視床下部に炎症が生じていることが
確認されています

なんだか 恐ろしいお話しですね

でも 食欲制御には 
ちょっと次元が異なるもっと厄介なことが絡んできます

あとは来週につづく
高橋医院