中央区・内科・高橋医院の
お酒と健康に関する情報


これまで説明してきたように

お酒を飲んで太るか太らないかは
アルコールを飲んだ時に
一緒に食べるつまみの内容や 
どれだけ食べるかに
影響されているようですが

では 食欲というものは 
どのように制御されているのでしょう?

お腹が減った もっと食べたい という
食欲の亢進

お腹がいっぱい もう食べたくない という
食欲の抑制

主に脳の視床下部という部位で
コントロールされています

脳の視床下部の解剖図

視床下部には
「食べたい指令」を出す摂食中枢「お腹いっぱい指令」を出す満腹中枢
があります

摂食中枢 満腹中枢を説明する図
また視床下部より下の 
首の高さにある延髄孤束核には
胃 消化管 肝臓など
体のさまざまな部位からの情報が届く部位があり

そこでまとめられた情報が
視床下部や大脳皮質に伝えられます


このように視床下部体内の消化やエネルギー状態に関する情報を得て
食べたいかお腹がいっぱいかを決定します

また視床下部には
体内時計(覚えてますか?)や体温などの中枢もあり
それらからの情報も食欲を影響を与えています

具体的に 体内のどのような部位からどのような情報が
延髄や視床下部に上がっていくかというと

*食べ物が入ってきて
 胃が物理的に膨らみましたよ という胃の伸展刺激

*胃や腸に食物が入って分泌される
 消化管ホルモンを介した食べ物の消化状況

*肝臓からは
 グルコースセンサーなどを介した
 エネルギーの代謝や蓄積に関する情報

*脂肪細胞が産生する種々のアデイポカイン

*食物から消化された
 糖分(血糖値)脂質(脂肪酸)など
 栄養素そのものによる情報

*血糖値に反応して膵臓から分泌されるインスリン

こうした
消化状態や代謝された栄養素の情報が
相まって 食欲が規定されます

脳と胃腸での食欲調節機構の図

一方 視床下部には
より上位の大脳皮質や大脳辺縁系からも
情報が降りてきます

*大脳皮質から 視覚 嗅覚 味覚といった
 食欲に影響する情報や
 食後の満足感や快感が伝わりますし

*大脳辺縁系からは
 食欲に影響する記憶や情動が伝わります
 
こうした五感や記憶などの抽象的な情報も
食欲に大きく影響します


視床下部の食欲中枢に入力されるさまざまな種類の情報

それぞれの情報は
「食欲制御物質」と呼ばれる
ホルモン液性因子に変換されて伝えられます

食欲促進系因子

*消化管で分泌される グレリン ガラニン 
*交感神経で分泌される ノルアドレナリン
*視床下部に存在する オレキシン オピオイド 
*下垂体に存在する メラニン凝集ホルモン(MCH)
*副腎皮質ホルモンの グルココルチコイド 
など

食欲抑制系因子
*脂肪細胞から分泌される レプチン
*消化管から分泌される
 インクレチン(GLP-1) コレシストキニン PYY
*膵臓から分泌される インスリン
*視床下部に存在する オキシトシン セロトニン ヒスタミン
*女性ホルモンのエストロゲン 
など

食欲促進因子と食欲抑制因子

聞いたことがあるものもあれば
初めて聞くものもあるでしょうが

こうした物質的 精神的なさまざまな情報が
視床下部の食欲制御中枢に集結して
食べたいか お腹いっぱいかが決まるのです

興味深いのは
食欲促進系因子よりも抑制系因子の方が
数が多いこと

ヒトはもともと食いしん坊なので
食欲を抑制する仕組みの方が
より一層厳密なのかもしれません?(笑)


では アルコールを飲むことが
これらの食欲制御物質にどのような影響を与えるか?

飲酒により

食欲促進因子のグレリン ガラニン オピオイドの
分泌が促進され

食欲抑制因子のレプチン インクレチンの
分泌は抑制される

つまり お酒を飲むと
食欲のアクセルが踏まれ
ブレーキが壊れてしまう
というわけで

こうした機序により
お酒を飲むと食欲が増してくるわけです

さらにガラニンやグレリンは 
さらにアルコールを飲みたくさせる作用があるので
飲む→食べる→飲む→食べる→・・・・
という悪循環が果てしなく進んでしまいます

しかも食べたら確実に太る夜遅くの時間帯に!

お酒を飲みながら大食いしている人

どうやら お酒を飲むと太る理由が
かなりはっきりしてきたようですね

しらふだと 
こうした状況は恐ろしいと思えるのですが 
飲んでるとねえ、、、(苦笑)

これを読みながら
うなずかれている患者さんたちの顔が
目に浮かびます

では今日の一句を

飲んだら食うな
食うなら低カロリーつまみ

字余り お粗末さまでした(苦笑)
高橋医院