薬物とアルコール
中央区・内科・高橋医院の お酒と健康に関する情報 お酒と薬を一緒にやって ラリッちゃって、、、 などという話を 聞かれたことがある方もおられるでしょう 書き手は留学中に とても疲れて眠れなかったとき 一度だけお酒を飲んだあとに ハルシオン(睡眠薬)を飲んだら 電話がかかってきて起きた時に ボ~っとしてしまい なんか変で ホントにビックリしたことがあります あ これがニュースで話題になっていた状態か と実感しました(苦笑) そんな実体験に基づいてお話ししますが お酒と薬の代謝は複雑に絡み合っているので 充分に注意する必要があります 慢性的に飲酒をしている人は お酒を飲んでいないときでも 薬が効きにくくなることがあります また 普段はそれほどお酒を飲まない人でも お酒と薬を同時に飲むと 薬が長時間体内に残るために 強く効きすぎてしまうことがあります 特に睡眠剤とお酒を一緒に飲むと 昏睡状態に陥る危険性もあるので どんなに疲れていても どこぞのアホな書き手のようなことは 絶対にされないでください どうしてこうした現象が起こるかというと 肝臓には お酒と薬物の両方の 代謝・分解に関わる酵素システムがあるからです 以前にも解説したように アルコールは90%以上が ADHという酵素で代謝されますが MEOS(ミクロソーム・エタノール酸化酵素システム) という酵素システムも わずかながらアルコール代謝に関わります ADHはミトコンドリアで働く 主たるアルコール分解経路 MEOSは小胞体という細胞内器官で働く アルコール分解のヘルパー経路 と理解してください MEOSがヘルプするのは 大量にお酒を飲んだときです 通常はまずADHが働いて アルコールを代謝しますが アルコールが多量で ADHだけでは分解しきれないときに MEOSがヘルプします つまりMEOSは 通常の状態では活性が低いけれど 大量飲酒すると活性が高まってくる 酵素システムなのです ですから 慢性的に大量のお酒を飲んでいると MEOSが活躍する機会が増え 恒常的にMEOSの量が増え 活性が高まります だから たくさんお酒を飲んでいると MEOSによる代謝能力が上がり お酒が強くなるのです このMEOSが アルコールだけでなく 薬物の代謝にも関わるので 話が厄介になります MEOSは 酵素システムと表現しましたが その働きには シトクロームP450という酵素も関与します このシトクロームP450が 薬物代謝の中心となる酵素なのです ということで 慢性的な大量飲酒により MEOS活性が高まっていると しらふのときも薬の代謝が速くなり その結果として 薬の効果が短くなるので効きにくくなる 精神安定剤のジアゼパム 鎮痛剤のアセトアミノフェン などで起こります 一方 アルコールと薬を同時に摂取すると MEOSはアルコールを優先して 代謝しなければならないため (下図中央点線) 通常の薬物代謝(下図左端)が後回しにされ 薬が体内に長く留まるために 結果として薬の効果が長引いてしまう 糖尿病の薬 抗凝固剤のワーファリン 睡眠薬・精神安定剤 などで起こります ということで 慢性的な大量飲酒をしている方は 痛み止めなどが 効かなくなる可能性がありますし 酒飲みではない方も お酒と薬物を一緒に飲むと 薬の作用が長引く可能性があり危険ですから 避けた方が賢明です ちなみに書き手は 鎮痛剤を服用すると ちゃんと効きます 変だなあ MEOS活性は充分に高いはずなのに? という突っ込みは 入れないでください(再苦笑)
高橋医院