インフルエンザ2015・傾向と対策
去年の今頃は 既にインフルエンザの患者さんが たくさん来院されていましたが 今年はまだ 当院では インフルエンザと診断された患者さんは おられません 東京都健康安全研究センターが 毎週金曜日に発表しているインフルエンザ情報でも 都内で報告されているインフルエンザの患者さんの数は 去年の同時期の20%にも満たず 過去5年でも一番少ない状況です 去年が 過去5年間で一番早く流行が開始したのとは対照的に 今年は逆に 過去5年間で一番流行の開始が遅れていて 本格的に流行り始めるのは 12月半ば以降と推測されています そんなわけですから インフルエンザワクチンの接種を 受けられていない方は まだ間に合いますから 是非 早目にお受けください というのも 今年のインフルエンザの流行は ちょっと複雑そうだからです 日経メディカル電子版に掲載されていた情報によると 今までに報告されている インフルエンザ患者さんから検出されたウイルスのタイプは A型(H3N2)が最も多く 2009年に大流行したA型(H1N1)が その次に多いのですが B型は 例年ではA型の流行が終息してから流行し始めることが多いのに 今年は既に山形系統 ビクトリア系統ともに検出されています 下の棒グラフに示されているように 去年はビクトリア系統は検出されなかったのに 今年は検出されていますし 山形系統は 今年は既に去年一年分の検出数と同等です A型(H3N2)が主役だった去年とは異なり 今年はA型(H3N2)とA型(H1N1)の 混合流行が既に始まっていて さらに例年と異なり 初期からB型の流行が 重なる可能性があるようです インフルエンザのタイプについては 今年のワクチン情報のブログで説明しましたが こうした今年検出されている A型(H3N2) A型(H1N1) B型(山形系統 ビクトリア系統)は いずれも 今年接種しているワクチンがカバーしているタイプです 去年までのワクチンがカバーしていたのは A型(H3N2) A型(H1N1) B型(山形系統)の3種類(3価)で 今年のワクチンは それらに加えてB型(ビクトリア系統)が追加されて 4種類のタイプをカバーしています(4価) 厚労省が 今年はこの4種類のタイプが流行しそうだと予想したので こうした新たなワクチンが用いられるようになりましたが 厚労省の予想通りの結果が出ているので 是非 今年はワクチンを接種した方が良いと思われます また 今年 ワクチンを接種した方が良い理由が もうひとつあります 今年流行しそうなB型は ちょっと厄介なのです 健常者が 今年のワクチンで用いられているタイプに対する抗体を どれだけ有しているか調べた結果 特定の年齢層では B型に対する抗体の保有率が低いことが明らかになったのです *A型(H3N2) A型(H1N1)に対する抗体の保有率は 比較的高いのですが *B型(山形系統)に対する抗体の保有率は中程度で 0~4歳 70歳以上では特に低い *B型(ビクトリア系統)に対する抗体の保有率は低く 0~9歳 20代および50代以上で特に低い したがって 4歳以下のお子様や 70歳以上の方は シーズン初めから流行しそうなB型(山形系統)に感染するリスクが高く 9歳以下のお子様や 20代および50代以上の方は 今年新たに流行しそうなB型(ビクトリア系統)に感染するリスクが高い ですから 特にそうした年代の方々は B型ウイルスへの感染対策のためにも 早目のワクチン接種をお勧めします A型とB型では 感染したときの症状に大きな差はありませんが B型はA型に比べると *感染力が強く 潜伏期間が長いので 周囲の人にうつしやすい *高熱がでないこともあるので インフルエンザを疑いにくい *治療しても A型では1日で解熱するが B型では解熱に2日ほどかかる *咳や痰などの気管支症状が多い *嘔吐や下痢などの消化器症状が多い といった特徴があります 高熱などの症状が激しく 容易にインフルエンザを疑うA型に比べて B型は 比較的発熱が軽度で 嘔吐や下痢などの消化器症状をともない 非典型的なので インフルエンザが疑われず 放置されるリスクもありますから 心配な方は早目に受診されることをお勧めします また 厄介なことに 1シーズンで A型とB型の両方に かかってしまう方もおられます インフルエンザに 一冬で二度かかってしまうのです ウイルスのタイプが異なるので A型にかかったから B型にはかからない というわけにはいかないので お気をつけください これから寒さが厳しさを増し 空気が乾燥してくると インフルエンザウイルスが繁殖しやすくなり 流行のリスクが高まってきます 繰り返しになりますが まだワクチン接種をされていない方は 早目に受けられ ワクチン接種をされた方も 日々の手洗いを励行されて インフルエンザにかからないようにご注意ください
高橋医院