痛風を放置すると、、、
痛風を放置すると 徐々にしかし確実に 下記のようにステージを踏みながら 慢性的に進展していきます <高尿酸血症のステージ進行> @無症候性高尿酸血症期 *自覚症状はありませんが 高尿酸血症の持続により 関節腔内等に尿酸塩結晶が析出・沈着し始めます *この時期から尿路結石を生じることもあります *このまま放置して10年以上経過すると 高頻度に痛風発作が起こります @急性痛風発作期 *痛風発作が一度でも起これば 急性痛風発作期に入ったと考えます *治療せずに高尿酸血症を放置すると 痛風発作は高い確率で再発しますし 徐々に発作の頻度が増し 発作の間隔が短くなり やがて発作が寛解しないうちに 次の発作が発症してしまうようになります *アメリカの調査では 痛風発作は初回発作から 2年以内に78% 1年以内に62%が再発し 初回発作から10年以上再発しない患者さんは わずか7%にすぎないと報告されています @結節性痛風期 *痛風発作があっても治療をうけずに放置すると 慢性通風期になります *尿酸塩結晶が関節以外の部位にも析出し 痛風結節 腎障害(痛風腎)骨破壊などを 発症してしまいます *痛風結節は体温の低いところにできやすく 耳介 手指の関節 ひじの後ろ側 くるぶし 足指の関節などに 高頻度に見られます <高尿酸血症により生ずる病気> このように 最初は無症状でも 高尿酸血症を放置すると痛風発作を起こし それでも適切な治療を継続して行わないと 腎臓の機能を低下させたり 骨の破壊が起こってきてしまいます 発作の痛みが改善すると 自己判断で治療を止めてしまう方もおられますが 放置すると このように厄介なことになりますから たとえ自覚症状がなくても 継続して治療を続けることが大切です この点は 是非お願いしたいと思います <痛風にともなう腎臓の合併症> つぎに 痛風にともなって起きてくる 腎臓の合併症について解説します @CKD:慢性腎臓病 *CKDだと 糸球体からの尿酸濾過量の減少による 尿酸排泄低下があるので 尿酸値が増加しますが *高尿酸血症そのものが 結晶沈着を介さずに CKDの発症進展に関係すると考えられています *それには 尿酸値増加により ・糸球体の機能(推定糸球体濾過量:eGFR) が低下する ・腎機能の指標であるクレアチニンが 上昇する といった機序が関わり 上図に示されるように 尿酸値の増加とともに クレアチニン値上昇の危険度が高まりますが 薬物治療で尿酸値が改善すると eGFRやクレアチニンも改善してきます つまり 高尿酸血症の持続が 腎機能を徐々に低下させてしまうのです @痛風腎 *慢性的に尿酸が高値を持続し 尿酸塩が腎臓内に沈着することで生じ 人工透析や腎移植が必要となる末期腎不全に進展する 大きなリスクファクターとなります @尿路結石 *高尿酸血症が持続すると 尿酸を始めとする 尿中の水に溶けにくい物質が尿路に析出し 結石を形成してしまいます *尿管結石は 痛風患者さんの10~30%にみられ なかには痛風発作よりも先に 尿路結石が起こる場合もあります *約40%に再発がみられます *尿管に結石がつまると 背部 側腹部から下腹部にかけて 激しい痛みが生じます 患者さんにうかがうと この痛みはかなり激烈で 前かがみの姿勢をとらないと 痛みが我慢できないほどだそうです *尿に血液が混じることも少なくありません *尿管結石ができやすい危険因子としては ・尿量あるいは水分摂取不足 ・尿中尿酸排泄量の増加 ・酸性尿の存在 などがあります あとで治療の項で詳しく説明しますが 高尿酸血症の患者さんに 水分を充分に補給してください とか 尿をアルカリ性にする食物を食べて下さい とお願いするのは こうした理由によるものです 高尿酸血症や痛風を放置すると *人工透析や腎移植につながるリスクがあること *尿管結石で 激しい痛みに悩まされるリスクがあること を ご理解いただけたでしょうか? 次回は 食生活 日常生活の注意について説明します
高橋医院