便秘の薬物治療
生活習慣を改善しても 便秘が続く場合は お薬に頼ることになります 便秘の薬物治療の最大目標は 便を軟らかくすることです 便が硬いために 排便困難症状が起きるので 硬い便を軟らかい便にして 排便困難症状をとるのがポイントです そして *便の形状を正常化する *排便回数を正常化する *腹部膨満感などの便秘周辺症状を改善する *排便困難感をなくす ことが 具体的な治療目標になります 便秘の治療に使われる主な薬について説明します <緩下剤> 薬物治療の基本になるのが 酸化マグネシウムなどの緩下剤です 大腸における水分の吸収を抑制して 腸管内の水分を保持し 便を軟化させる作用があり 便が硬く 排便困難症状がある場合に効果的です 1日2gを3回にわけて 基本的には毎日服用しますが 投与量が多いと水様便になることがあるので 便の形を見ながら 1日の投与量をこまめに調節します この薬は 他の薬と併用するとよくないことがありますから 主治医の先生とよく相談しながら使うことが大切です <刺激性下剤> 酸化マグネシウムだけでは うまくいかないときは 必要に応じて刺激性下剤を追加します プルセニド アローゼン ラキソベロン コーラック などが代表的な刺激性下剤で 腸管の筋間神経叢を刺激し 大腸の蠕動運動を亢進させて 便の移動を促進する作用で働きます 刺激性下剤の問題点は 連用により習慣性 依存性 耐性が生じるリスク があることです 漫然と毎日投与することで 患者さんは精神的依存性に陥り 内服量が徐々に増加していきますが 患者さんは決して満足感を享受できません そして ひとたび習慣性に陥れば そこから元に戻ることは不可能に近いので 刺激性下剤の連用は慎むべきで 漫然と連用せずに 排便が2~3日ないときなど必要なときに頓用で用います 刺激性下剤の作用は強力で 強い腹痛とともに 激しい下痢となることが少なくありません また服用してから効果が現れるまでに 約8時間を要しますから 朝の排便時での効果を期待するためには 前の晩の夕食後か就寝前に服用するのが効果的です <便秘の周辺症状を改善する薬> 腹部膨満感 腹痛などの便秘周辺症状には *腹部膨満感に対して 桂枝加芍薬蕩 ガスモチン *腹痛に対して 大建中湯 がよく用いられます 漢方薬は便秘周辺症状に効果的な場合が多いのが特徴です <新しい便秘の薬> 最近 新たな作用機序による便秘薬として ルビプロストン(商品名:アミティーザ)が登場して 便秘治療の世界も だいぶ様変わりしてきました この薬は 過敏性腸症候群の解説でも紹介しましたが 小腸でのクロライドチャネルを活性化して 小腸での腸液の分泌を促進し 腸管内の水分量を増やすことで 排便を促すタイプで 腸管内の輸送機能を改善し 便の移動をよくする機能も有しています 服用後1日で効果が現れ 1か月間ほど連用すると調子良くなることが多く 長期連用しても耐性が生まれず 併用に注意すべき薬もないので 長期間 安全に使用できます まず1日1カプセルを夕食直後に内服し 問題がなければ1日2カプセル 朝夕食直後に服用します 稀に服用後に嘔気を感じることがありますが 嘔気は食直後の服用で改善しますし 1~2週間で軽快することが多いようです 当院でも これまでの便秘薬で効果がなかった患者さんで アミティーザに変えると 便秘が改善した方がたくさんおられます このように 便秘の薬物治療は 新たな段階を迎えつつあります それだけに 患者さん個々人の症状に合った 治療法 治療薬の選択が大切です また 刺激性下剤の習慣的使用は 危険なので注意すべきです 便秘でお悩みの患者さんは やむくもに市販薬に頼ったりせず 是非ご相談においでください
高橋医院