天の音色 世俗の音 龍の声
雅楽の管絃で メロディを奏でるのは 3種類の管楽器 篳篥 笙 龍笛 というお話しをしましたが *篳篥 は 音量が大きく 世俗の音を表し *笙 は 高さの異なる音を一度に鳴らすことができるので 天の音を表し *龍笛 は 天の音と世俗の音をとりもち 天と地を鎮める龍の声を表す とされています それぞれの楽器の 音色の特性を組合わせて 宇宙観を表現しているのですね なかでも 圧倒的な存在感を示すのが 天の音を奏でる笙の音色です! パイプオルガンの音色を彷彿させて まさに天空界の雰囲気を醸し出してくれます 初めてナマの音色を聞いたときは かなり感動しました! また 演奏家が吹いている姿が 拝んだりお祈りをしているようで とても楽器を演奏しているようには見えず それも印象的でした 笙は 17本の長さの異なる細い竹管を 縦に円筒状に組んだ形をしていて 竹管の下部に開けた指穴を押さえ 吹き口より 吹いても吸っても 音を出すことができます シングルリードの楽器で 篳篥や龍笛のように音が不安定でなく また 長さの違う竹管で 音階を生み出すことができるので 指孔を5~6つ同時に押さえて 和音を奏でることができます ハーモニカと同じで 吹いても吸っても音が出るため まさに音で覆い尽くすような パワフルな面もあり それが故に より神々しい音色という印象を受けます この笙を奏でる楽師さん達は 舞台上で自分のパートが終わると 小さなコンロの上で しきりに笙をくるくるとまわしていて その光景を見て とてもびっくりしました! なんでも 呼気により結露が生じリードに水滴がついて 音が狂うので それを防ぐために こまめに乾かすのだとか 面白いです! 笙には前回の篳篥と塩梅のように ある言葉の語源にまつわる 面白いお話があります 笙は 中国から日本に伝わりましたが 日本で演奏されているうちに もともとあった17本の竹管のうち2本には リードがつかなくなったとか どのような経緯で 2本が使われなくなったのか その理由も とても興味深いのですが 使われなくなった竹管の名称が 也(や)と毛(も)だそうで そこからなまってやぼ野暮の語源になったとか ホント?(笑) 也(や)と毛(も)の竹管から出る音は 風流ではなかったのでしょうか? さて 管弦は これら3種類の管楽器に 弦楽器の 琵琶 箏(こと) 打楽器の 鉦鼓(しょうこ)鞨鼓(かっこ)太鼓 が加わり 各楽器について 管楽器は3人ずつ 弦楽器は2人ずつ 打楽器は1人ずつ それぞれ奏者がいて 全部で16人編成になります 管弦では 指揮者は存在せず 最前列の上手に座る鞨鼓の奏者が 曲全体の流れやテンポを統率する役割をします 鞨鼓の奏者は 演奏が始まる前 終わったあとに 目立たぬように聴衆にお辞儀をします 各奏者が互いに間合いをはかることで 演奏の調和が図られるのが 管弦の特徴で それぞれの奏者が 他の楽器の演奏を聞き 前列にいる奏者の手の動きを見て 間合いをはかることで まとまりのある合奏がなされます このように 奏者の呼吸や間合いによって 演奏が始まり また終わるので 突然始まり 知らぬ間に終わる という感じで 最初に聞いたときは 面喰いましたよ(笑)
高橋医院