いい塩梅
お正月テーマパークで チケットがsold outで行けなかった 雅楽の演奏会は 東京楽所(とうきょうがくそ)という 雅楽演奏家集団によるものでした 東京楽所は 宮内庁式部の楽部のメンバーを主に創設された 芸術音楽としての雅楽演奏と普及を目的とする 数少ない雅楽演奏家団体で 書き手は数年前に 東京楽所さんの演奏会に行ったことがあります 雅楽には 馴染みがない方が多いでしょうが お正月の神社などで耳にされた機会が あると思います 書き手も 数年前の演奏会に行ったことがあるだけですが その演奏会は 初心者向けの解説付きで 「あなたの知らない世界」について 色々と学ぶことが出来て とても印象的でした その時のことを思いだして 雅楽について少し蘊蓄しようと思います(苦笑) そもそも雅楽とは アジア大陸の諸国から伝わってきた音楽と 日本古来の音楽が融合し 平安中期・10世紀頃に完成した 日本で最も古い伝統音楽で 宮廷や貴族社会 神社などで 演奏されてきました 雅楽独特の管楽器・弦楽器による合奏は 管弦(かんげん)と呼ばれ 世界最古のオーケストラ編成 とされています 管弦は *吹物 と呼ばれる 管楽器 *弾物 と呼ばれる 弦楽器 *打物 と呼ばれる 打楽器 から構成され 舞台では 後方から 吹物 弾物 打物 の順に配置されます 管絃においてメロディを奏でるのは 西洋音楽のように弦楽器ではなく 竹でできた3種類の吹物 篳篥(ひちりき) 笙(しょう) 龍笛(りゅうてき)で これらの音色が合わさることで 宇宙観が表現されるそうです 今日は 演奏会でうかがった 篳篥にまつわる興味深いエピソードを 紹介します ちょうど良いことを いい塩梅(あんばい)だ と表現しますが この 塩梅 という言葉の語源には 篳篥という楽器の音の不安定性が 関与しているそうです 篳篥は ひとつの穴を押さえる同じ指つかいでも リードを咥える唇の位置や深さ息づかい 穴を押さえる指の力の強さなどにより 一定の幅で音程や音色を自由に変えられるそうで こうした篳篥に独特な演奏法を 塩梅(えんばい)と呼びます この塩梅(えんばい)がなまって 塩梅(あんばい)になったそうで 語源は 篳篥を上手にちょうどよく奏でることだったのですね 面白いです! もうひとつ 篳篥について印象的だったエピソードは この楽器の音色を出すのに使われる 露舌とよばれるダブルリードに関することで この露舌は 葦で出来ていますが いちばん美しい音色を出すことができる葦は 平安時代から現在に至るまで 一貫してある場所で獲られています そこは 大阪・高槻周辺にある 淀川沿いの鵜殿 現代になって 宮内庁式部の方々が全国調査されても 鵜殿の葦を上回る品質の葦がとれる場所は なかったそうで 平安の頃の人の目効きは 素晴らしかったのですね ところがその鵜殿の葦が 存続のピンチに瀕しているとか というのも 新名神高速道路の一部が 鵜殿の葦原の上に建築される予定だそうで もしそうなってしまうと 品質の良い葦を得るために 年に1回行われる野焼きもできなくなり 篳篥の質の良いリードが 得られなくなる危機がすぐそこに、、、 ということで 演奏会の終わりには署名運動が ロビーで行われていて 書き手も長い列に並んで署名をしてきましたが あれは4年ほど前のことでしたから どうなったのでしょう? ちょっと気になります、、、
高橋医院