この時期 つらい咳
この季節は 風邪やインフルエンザが流行しますが そうした病気でよくみられる症状が 咳 です 咳は 医療機関を受診される患者さんが 訴えられる症状のなかで かなりの高頻度を占めると言われ 咳がつらくて外来を受診される患者さんは とても多いのです そこで この悩ましい咳について 解説していきます 咳は 喉 気管支 肺 といった 呼吸器系の病気にともない起こる 代表的な症状です そこでまず 咳について理解するために 呼吸器系について説明します 呼吸器系は 鼻 喉から始まり 肺に至るまでの部分で 上気道 下気道 の ふたつのパートに分かれます <上気道> 上気道は *鼻 *咽頭 *喉頭 の3つの部分から構成されます @鼻は 空気が体内に入る最初の部分で 鼻毛により空気中の異物を捉えたり 鼻の粘膜から分泌される粘液が 細菌やチリを付着して フィルターのような役目をしています 分泌される粘液は 鼻水の元となります @咽頭は 鼻の奥から喉につながる 10cmほどの長さの部分で 鼻から入った空気 口から入った食物の通り道になり 喉頭につながります これらの鼻や咽頭が 風邪をひいたときに いちばんやられやすい部位で 鼻水が出たり 喉が痛くなったりする場所です @喉頭は 喉のさらに奥深い部分で 気管や食道につながり 空気は気管に 食べ物は食道に流れていきます 気管は 食道より前方に位置します 医学生の頃 機関(気管)車は食堂(食道)車の前 と ゴロ合わせで覚えたものです(笑) 喉頭のいちばん上部には 喉頭蓋と呼ばれる蓋のようなものがあります 食物が気管に入ると 呼吸器系が感染を起こして大変なことになるので 食物を飲み込むときに 気管に入らないように蓋をする役目を 果しています 寝たきりのお年寄りなどでは この飲み込みの動作が上手くいかず 喉頭蓋が気管に蓋をできず 食物が気管に入ってしまい 嚥下性肺炎という 危険な肺炎を起こしてしまうことがあります <下気道> 喉頭からつながる下気道は *気管 *気管支 *肺 から構成されます @気管は 10cmほどの長さで 下の方で 肺につながる左右の気管支に分岐します @気管支は 肺に入り 肺の中で枝分かれを繰り返しながら だんだん細くなってゆき 細気管支になります @気管 気管支の構造 気管や気管支は 内側(気道)から外側に向い 粘膜層 気道上皮 平滑筋 気管軟骨が 輪状に層を作っています 細菌やウイルスが感染すると 気道上皮が損傷したり 気管支平滑筋が収縮したりします これらが 咳や喘鳴の原因になりますが その点はまた詳しく説明します @気管の物理的な異物排除機構 気管に大量に存在する 粘液分泌細胞から分泌された粘液が 気管に入ってきたゴミなどを吸着します さらに 上皮細胞の外側に存在する線毛の動きにより 咽頭方向に送り返されます こうして送り返された異物を含んだ粘液は 痰として喀出されます @肺胞 細気管支は さらに分岐を繰り返し やがて 呼吸器系の最末端装置である 直径0.2mmほどの小さな 肺胞 になります 肺の中に いくつものブドウの房が存在していて それぞれの房を構成する 小さなブドウの実が肺胞 そんなイメージです 肺胞は 小さな袋のようなもので 肺全体に約6億個も存在します また 全肺胞の表面積は6 0~70平方メートルにもなります この肺胞1個1個のなかで 鼻から入ってきた空気中の酸素が 肺胞の壁に存在する毛細血管に取り込まれ 全身に運ばれていきます 酸素は全身の細胞に運ばれて ミトコンドリアで 栄養素からエネルギー(ATP)を産生する反応に 使われます また全身から集められた二酸化炭素が 毛細血管から肺胞に放出され 酸素とは逆のルートをたどって 体外に排出されます この 肺胞での 酸素と二酸化炭素のガス交換こそが 呼吸器系が果たす一番重要な働きです 呼吸系とはどんなものか イメージすることができたでしょうか? 次回は 咳がなぜ起こるかを説明します
高橋医院