たこつぼSNS
2010年末から2011年にかけて 中東・北アフリカで連続して起こった 民主化運動 いわゆる アラブの春 当時は 遂にアラブ諸国でも民主化が進むか と もてはやされましたが 今となっては その評価はなかなか難しいと思います そして 当時しきりに言われたことが あのアラブの春運動の盛り上がりには SNSが大きく貢献した と言うことでした でも ひねくれ者の書き手は 当時から 本当にそうかなと SNS礼賛的な論評を 斜めに見ていました だって 革命というものは 多くの人々が参加する 市民運動的な盛り上がりが欠かせませんが それだけで簡単に成就するものではなく 一部の主導者たちが 一定の時間をかけて じっくりと練った綿密な作戦に基づいて 民衆を駆り立てていかないと 成功しないと思うからです その後の リビアやシリアの今日に至る状況を見ると 余計にそうした思いを強くしていたのですが そんなひねくれ者の書き手の 意を強くさせる特集が ニューズウイークに掲載されていました その特集の刺激的なタイトルは ソーシャルメディアの暗黒面! SNSは手軽な情報発信手段なので 多くの人々を デモに動員することはできるけれど 実はその効果は薄く むしろ独裁者を利するツールになる 危険性がある という趣旨です 世の中にSNSが登場する前の90年代には 市民の政府に対する抵抗運動の 7割近くが成功していたのに SNSが出回った2010年以降の成功率は 3割に過ぎない と この記事の著者は まず指摘します どうして そうしたことになったのか? まず 政府の方が活動家より SNSを巧みに利用することが多いそうです 検閲が強力な社会では ネット上のプライバシーはないも同然なので 政府が活動家の通信を傍受し その運動を徹底的につぶせる ついで大きな原因は SNSを通じて組織した運動では 参加者の姿勢が 安易になりがちだそうです 人々の信頼関係や団結を じっくりと育まずに やみくもに多くの人を動員しても そんな脆いつながりは ちょっとした圧力で簡単につぶされ そして 瞬間的に盛り上がった熱は すぐに冷める ネットを見て共感して デモに参加した人は 社会を変える力の一翼を担ったという満足感は 得られるだろうが 本当に何かを変えるには 途方もない献身と忍耐が必要で SNSを通じて参加した人々にそこまで求めても 無理なことが多い うーん 厳しいご指摘ですが 的を得ていると思います そして さらに大きな問題は SNSは メッセージを広げる手段として有効ですが 同時に デマを拡散させる手段にもなる ということです これは SNS社会のマズイ点として 強調されることが多いポイントですが もともとヒトは 自分の考えを裏付ける情報に目が行きがちで 逆に それと異なる情報は目を向けない傾向があり SNSはそうした傾向に拍車をかけてしまう だからSNSでは そうした偏った見方や考え方が助長される 「反響現象」が起き上がりがちで そうした状況では デマが独り歩きし始めると 憎悪と偏見が異様に膨れ上がり 対立と分断がますます深まる 結論としては 強固で持続的な運動の組織の育成が必要な 民主化運動のような活動では SNS頼りの運動は あまりに危うく ツールとして問題がある 書き手は これはまっとうな指摘だと思いました そして 民主化運動といった ある意味で非日常的な場面だけでなく 日々の生活においても SNSやネットの影響は大きいと思う SNSに限らず 現代のネット社会では 検索サイトの検索結果の順番や そこに出てくる広告の内容などは ユーザーの過去のネット活動歴が反映されるし 上述したように ヒトは自分の嗜好や意見と同じ情報ばかりを 求めたがる傾向があります そうすると どうしてもタコツボ的な情報ばかり浴びるようになり ある意味では先鋭化しますが 逆に言うと ものごとを広い視野から見られなくなる リスクが大きい また SNSは 論争でなく一方的に意見を言う場なので ヒトは自分の耳に心地よい意見や情報のみを読み 徐々に批判精神を失っていき 異質な声を聞けなくなってしまいがちです 現代のネットやSNSの環境は 知らぬ間にヒトを偏狭にさせかねない 自戒を込めて 充分に注意すべき点だと思います、、、 さて アラブの春に絡んだ話から始まったので 最後は ひねくれ者の書き手らしい オチで終わりたいと思います 革命は 成就したその日が いちばん美しい この言葉は 誰が語ったか忘れてしまいましたが けだし名言だと思うのですよ 自分好みの情報ばかり聞きたがり ひとたび革命が成就すると 権力闘争に明け暮れてしまう ヒトの性というものは 厄介なものですね(苦笑)
高橋医院