糖質ダイエットの日米学会の評価
中央区・内科・高橋医院の ダイエットに関する情報 臨床医学系の学会が有する 大きな役割のひとつに 病気の診断や治療に関する しっかりとしたガイドラインを作成して コンセンサス・指針をつくる ことがあります その昔 書き手もお手伝いしたことがありますが 本当に大変な作業です 日本全国の医師が このガイドラインをもとに 日々の診療を行うと思うと ひとつの言葉 ひとつの数字たりとも おろそかにできませんでした そんな学会は 今や隆盛の糖質ダイエットを どのように評価しているのでしょう? <アメリカ糖尿病学会の見解> アメリカ糖尿病学会の見解は 下記のように変遷してきました *2007年までは 「糖質制限食(130g/日以下)は してはいけない」 *2008年には 「糖質制限食は カロリー制限食と同様に減量に有用である」 *2012年には 「糖質制限食は 血糖管理や脂質改善にも有効である」 ここ10年あまりで 糖質ダイエットの評価が 大きく前向きに変化しているのが わかります そして2013年には 過体重の糖尿病患者さんの体重減少のために 2年以内の短期間の *低炭水化物食 *低脂肪食 *カロリー制限食 *地中海食 を推奨していて 減量のために 糖質ダイエットを2年ほど行うことは 推奨されるに至りました 但し 低炭水化物食では 腎機能 脂質状態 タンパク質摂取量の監視と 適切な低血糖治療が必要であるとしている と注意もしています 2014年の栄養に関する勧告では *他の炭水化物源よりも 野菜 果物 全粒穀物 豆類 乳製品からの 炭水化物の摂取が良好な健康状態に必要である とされ *炭水化物では 低いグリセミック負荷の食品が 血糖値を制御するとして推奨し 糖質を含む食材の種類にまで 踏み込んで言及しています そして 糖質の比率は 全エネルギー比率の40%未満が望ましい としています <日本糖尿病学会の見解> では 日本糖尿病学会の評価はどうでしょう? 2013年に出された日本糖尿病学会 「日本人の糖尿病の食事療法に関する日本糖尿病学会の提言 ~糖尿病における食事療法の現状と課題~」では 日本人の肥満の是正と糖尿病予防に関しては *運動療法とともに積極的な食事療法と *総エネルギー摂取量の制限(カロリー制限) が基本で もっとも重要であるとし カロリー制限なしの炭水化物摂取制限は 長期的な食事療法としてのエビデンスが 不足しているため (腎機能障害例での有効性・安全性も確認されていない) 現時点では薦められない と言及しています また 炭水化物摂取に関しては 日本人の平均摂取比率と同様の 50~60%(150g/日以上) 程度の比率を目安とし 高血糖以外の病態も 考慮する必要があるため どのような糖尿病合併症を持っているかによって 増減するべきとしています また 1日に最低130gは 摂取すべきと勧めています 炭水化物のエネルギー摂取比率を 50~60%とするエネルギー制限食は 日本人の嗜好性に合い 遵守性も担保できる食事療法である と 評価する一方で 極端な糖質制限食は リスクがないことが証明されていないので 現時点では推奨できない というのが 日本の糖尿病学会のスタンスのようです そして結語では 日本人の伝統的な食文化を基軸にしながら 現在の食文化の変化にも対応した 食事療法の在り方を考えることが重要とし 新たなエビデンス構築が必要だと主張しています この日本糖尿病学会の提言に対し 糖質ダイエットを推奨する原理主義的な方たちは 厳しい評価をされ 現実路線の方たちは 一定の評価をされているようです 書き手は糖尿病学会員ではありませんが 勉強して感じたのは アメリカの学会がここ10年あまりで 糖質制限ダイエットを認める流れで動いてきたので 日本の学会も 認めざるを得なくなってきたのかな ということです 確かに1日50g以下の厳しい糖質制限は 持続可能性や長期リスクに 疑問点がつくため 現実的には 1日150g程度の制限が妥当と考えますので 日本糖尿病学会の提言は 現実的なものに思えます
高橋医院