栄養センサーが食欲制御をスタートさせる
中央区・内科・高橋医院の 食事と健康に関する情報 前回 説明したように 視床下部にある弓状核は 体内のエネルギー状態をモニターするセンサー として働いています <体内エネルギーモニターが食欲制御をスタートさせる> 弓状核の働きは 血中の グルコース や レプチン の値によって制御されます また 同じ視床下部の別の部位にある *1日24時間の慨日リズムを形成する部位や *体温調節をつかさどる部位 からも それぞれ情報を受けます 弓状核は こうした情報を統合して 脳内における食欲の制御を スタートさせます 弓状核には @食欲を亢進させるニューロン @食欲を抑制するニューロン が それぞれ別個に存在していて (ニューロンとは 脳のなかに存在する情報を伝達する神経細胞です) それらの働きにより 脳内における複雑で込み入った食欲制御が スタートされます 今日は それらについて 少し詳しく説明します <食欲を亢進させるNPY/AgRP/GABA ニューロン> 亢進させるニューロンは NPY/AgRP/GABA ニューロン と呼ばれ ニューロンの末端から *NPY *AgRP *GABA という3種類の神経伝達物質を分泌して 他のニューロンに情報を伝えます このニューロンは 絶食状態で強く活性化され 消化管から分泌されるグレリンによっても活性化されて 食欲を亢進させますが 食後は グルコース・インスリン により抑制され レプチン によっても抑制されます @NPY 室傍核 外側野に情報を送り 摂食頻度や摂食量に関与して 食欲を亢進させます @AgRP AgRPも強く食欲を亢進しますが 後述する食欲を抑制するPOMC/CARTニューロンを 抑制します 食物を摂取した途端に 速やかに抑制されます @GABA NPYやAgRPのように 直接的に食欲を亢進させるのではなく POMC/CARTニューロンや 視床下部の外側野・脚傍核にある 食欲を抑制するニューロンを抑制することで 間接的に食欲を亢進させます このように 単純に食欲のアクセルを踏むだけでなく 食欲のブレーキをかけさせないようにして 結果的に食欲を亢進させたりする なかなか複雑です どうして こんなまどろっこしいことをしているのでしょうね?(笑) <食欲を抑制するPOMC/CARTニューロン> 食欲を抑制するニューロンは POMC/CARTニューロン と呼ばれ ニューロンの末端から *POMCの一部が切れたαMSH *CART という2種類の神経伝達物質を分泌して 他のニューロンに情報を伝えます この系は レプチンで強く活性化されるのが特徴です @αMSH 報酬系の孤束核 摂食中枢の外側核 などに情報を伝えて食欲を抑制し 骨格筋での糖利用 脂肪組織での脂肪分解を促進して エネルギー消費を亢進させます αMSHの受容体が機能しないマウスは 食欲がとまらず 肥満になります @CART 報酬系の腹側被蓋野 側座核に情報を伝えて 快楽による食欲の制御に関わるとともに 室傍核 扁桃体 小脳脚傍核 孤束核を 活性化することで ストレスによる食欲減退にも関わります <センサーの弓状核が食欲制御システムのスイッチを入れる> このように弓状核は 体内のエネルギーレベルを最初にキャッチして 食欲の制御をスタートさせる まさにセンサーとして機能していて 脳の他の部位に情報を伝えることで 食欲の制御活動をスタートさせます そして 食欲を亢進させるか 抑制するかは 主にグルコース レプチンの動態により規定され 今日説明した 亢進系 抑制系のニューロンそれぞれが グルコース レプチンにより 活性化されたり抑制されたりしますし それぞれが相互に抑制しあうシステムもあり なかなか複雑です
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