インフルエンザの治療薬
インフルエンザの治療には 抗ウイルス薬が用いられます 現在 使用されているのは *経口薬の タミフル *吸入薬の リレンザ・イナビル *注射薬の ラピアクタ です いずれも A型 B型 どちらのインフルエンザウイルスにも効果があります <薬の作用機序> インフルエンザウイルスは ウイルスの表面に存在する ヘマグルチニン(H)と 感染する細胞膜表面の 糖シアル酸の 結合により細胞内に入り込み 細胞の中で増殖します その後 細胞膜まで移動し シアル酸とヘマグルチニンが再び結合し 最後にノイラミニダーゼという酵素が それを切り離して 増えたウイルスが細胞外に出ていきます 抗インフルエンザ薬は ノイラミニダーゼの働きを 邪魔する作用を持ちます その結果 増殖したウイルスは細胞の外に 出られなくなり それ以上感染が拡大しません つまり抗ウイルス薬の作用は あくまで ウイルスをそれ以上増殖させないことで 症状の悪化を防ぐもので ウイルス自体を 直接死滅させるものではありません インフルエンザウイルスの量は 感染後2~3日でピークに達し その後は減っていきます 前回ご説明したように 抗ウイルス薬は48時間以内の服用 とされているのはこのためです ウイルスが増えきった状態で 抗インフルエンザ薬を服用しても 意味が無いのです <タミフル(一般名・オセルタミビル)> 経口投与で 用法は1日2回 5日間投与 副作用としては 消化器症状が特徴的で 下痢や腹痛が起きます また 一時期話題になった 異常行動の発現があり 10歳以上の未成年の患者においては 因果関係は不明であるものの 本剤の服用後に異常行動を発現し 転落等の事故に至った例が 報告されているため この年代の患者には 合併症 既往歴等から ハイリスク患者と判断される場合を除いては 原則として本剤の使用を 差し控えることとされています <リレンザ(一般名・ザナミビル)> 吸入タイプで 用法は1日2回 5日間吸入 タミフルと同じように 異常行動が発現する可能性が考えられているので 子供から目を離さないようにしましょう <イナビル(一般名・ラニナミビル)> 吸入タイプ しかも単回吸入なので タミフルやリレンザと比較すると楽です ですから 書き手は大人の患者さんには このイナビルを処方することが一番多いです ただ 単回吸入なので 吸入がきちんと行えるというのが大前提 となります 吸入が上手くできないと 効果がありません! 薬局などで きちんとした吸入指導を受けてください <ラピアクタ(一般名・ペラミビル)> 抗インフルエンザ薬の中では 唯一 点滴静注で用いることが出来る薬で 経口や吸入投与が出来ない 高齢者等の患者さんで利用されています 日常的に用いる薬ではなく 入院で重症化したときや 高病原性鳥インフルエンザに使うものです <予防投与> 抗インフルエンザ薬の予防投与を 希望されて来院される患者さんは 少なくありません しかし いかなる場合も 保険適応外(自費)となります ラピアクタは 予防投与の有効性 安全性は 確立していないため予防投与できません 予防投与は服用している期間だけ効果があり 通常の予防投与は10日間です ワクチンの代わりにはなりませんので ご注意下さい 例えば 高齢者や受験生がいる家庭で 家族がインフルエンザにかかってしまったときなどは 予防的投与の適応になります <インフルエンザに関連する異常行動について> インフルエンザにかかったとき 主に未成年で 頻度としてはそれほど多くありませんが 下記のような異常行動が報告されています *突然立ち上がって 部屋から出ようとする *興奮して 窓を開けてベランダに出ようとする *家から出て外を歩いていて 話しかけても反応しない *人に襲われる感覚を覚え 外に飛び出す *変なことを言い出し 泣きながら部屋の中を動き回る こうした異常行動は 抗インフルエンザウイルス薬の 服用や種類の有無にかかわらず認められ 薬の服用との因果関係は はっきりしていません また 発熱から1~2日に出ることが多いので 熱が出始めて2日間は 特に注意が必要となります そこで 小児・未成年者がインフルエンザにかかり 自宅で療養する場合は 抗インフルエンザウイルス薬の服用の 有無にかかわらず インフルエンザと診断され 治療が開始されたあと 少なくとも2日間は 保護者等は小児・未成年者を一人にしない ことを原則とするように 厚生労働省から つい先日 通知が出されました また 事故防止策として *玄関ドアやすべての部屋の窓の鍵をかける *ベランダに面していない部屋で寝かせる *窓に格子のある部屋で寝かせる *一戸建てなら 1階で寝かせる いったことが推奨されています 充分にご注意ください
高橋医院