縦聴き ピアノコンチェルト
サントリーホールは 既にクリスマスモード! 舞台には マリインスキー歌劇場オーケストラのメンバーが 登場してきます ロシアの芸術の都 サンクトペテルブルグを代表するオーケストラですが 団員の皆さんの風貌は さすがにスラブ風 少し濃い目の茶色や黒が目立つ 髪の毛の色 何気にエキゾチックさを感じさせる顔貌 それほど背は高くないけれど がっしりとした体躯 なんとなく アングロサクソンのヨーロッパ人とは 異なります そして女性は スラブの方がきれいですよね(笑) 万雷の拍手の中 登場した指揮者のワレリー・ゲルギエフさん 不勉強の書き手は知りませんでしたが マリインスキー歌劇場を率いて20年余り 斯界では有名な方だそうで ちょっと強面で 厳格な哲学者のような風貌です 一緒に登壇したピアニストのデニスさんは 縦にも横にも巨体 みるからに気力も体力もみなぎっています! パンフレットで ラフマニノフのピアノコンチェルト1番から4番までを 1日で弾きこなす そんなスペシャルな企画をこなせるピアニストは 彼くらいしかいない と ゲルギエフさんが語っていましたが さもありなんです 午後1時から9時まで頑張るには 相当の気力 体力がいりますよね! ちなみに ラフマニノフ自身は やせ型の190cmの長身で 掌も充分に大きかったので ピアノを演奏するときは リスト張りの超絶技巧だったとか(笑) さて ピアノコンチェルト3番 世の中的には 2番と同じくらい人気が高いそうですが にわかラフマニノフファンの書き手には あまり馴染みがありません(苦笑) デニスさん 最初は巨体を折り曲げるように 静かに演奏していましたが 曲が展開して最後の方にいくにつれて 渾身の力を込めた演奏! いやー その迫力に圧倒されました! この3番は ロマンチックさを これでもかとばかりに訴えかけてくる2番とは 少し趣が異なります ベースにあるのが ラフマニノフ独特の得も言われぬ情緒性であることは 2番と変わらないのですが 直情的に訴えかけてくるのではなく 奥深くしっとりと語りかけてくる感じ 思い切り端折って言うと 大人の雰囲気ですよ 通俗すれすれの甘美さが 強く表に立つ2番と比べると 3番は 大衆受けの要素は少ないものの 構成面での洗練さの度合いは 2番をはるかに凌駕する といった論評もあり ピアノのテクニックも より高度なものが要求されているそうです 2番は ラフマニノフ自身が 一時的なスランプにより精神的に落ち込み その苦境から精神科医の暗示療法により立ち直り そのあとすぐに作曲されたそうですから 色々な意味でメリハリがストレート といった感じがあるのでしょうが それに対して 3番は 充実した壮年期に作曲された 4つのピアノコンチェルトのなかで 最もスケールが大きい傑作 と 評価されているそうで はい 聴き比べてみると とても納得できます そして 4番 初めて聴きます ベースに切なさやロマンチックさがあるのは 変わりないのですが 2番や3番に比べると 情緒的な力強い訴えかけが影を潜め むしろ 落ち着いて安心して聴けます アメリカ亡命後に書かれた 唯一のピアノコンチェルトですが ゲルギエフさんは 4番はユニークで素晴らしい曲と 2番 3番に勝るとも劣らぬ評価をしています 書き手は 結構 気に入りました 2番 3番とは趣が異なる深さが あるように感じます ひとりの作曲家が作ったピアノコンチェルトを 出来た順番に経時的に聴き比べるという経験を 初めてしましたが なかなか面白かったです 若い頃に作られた2番 円熟味を増した頃に作られた3番 さらに歳を重ねてから作られた4番 幹を形成する 哀愁を帯びたモチーフは 終始一貫して変わらないけれど 歳を重ねるにしたがい 当然ながら 表現の仕方は変化するのですね ゲルギエフさんに 音楽の新たな楽しみ方を教わった気がします それにしても ロシアのロマン派 抗しがたい魅力がありますね! そうそう ファーストバイオリンの女性も 魅力的でした!(笑)
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