エロス全開 スケベの栄光
凄いタイトルに魅かれて 思わずここに訪ねてこられた読み手の方 おられますか?(笑) 島田雅彦さんが書かれた 深読み日本文学 という新書を読みました 島田さんの文学作品は 未だ読んだことはないのですが(ゴメンナサイ!) いつぞやご紹介した 谷崎の春琴抄にまつわる番組や (最近 再放送されていましたよ! リクエストが多いのかな?:笑) いろいろなところでのコメントのユニークさで 島田さんには興味があったので おもわず買ってしまいました 日本文学史を *色好みの日本人 源氏物語 *ヘタレの愉楽 西鶴と近松 *恐るべき漱石 *俗語革命 樋口一葉 *ボロ負けのあとで 太宰治 坂口安吾 *現代文学の背景 世代 経済 階級 *テクノロジーと文学 といった とてもキャッチーで魅力的な切り口で語るのですが そのなかの白眉の1章が エロス全開 スケベの栄光 もちろん 谷崎文学の賞賛です!(笑) かの番組でも 島田さんは礼賛されていましたが *源氏以来の伝統がある 日本固有の文化でもある“色好み”を 20世紀に見事に再現して見せた *西洋近代の性にまつわる 最新の科学的・文学的知見を 自分の変態性 日本文化の色好みの伝統を うまく調和させて 世界文学にまで育て上げた *世間から嘲笑されようとも 侮蔑されようとも 確固たる意志を持ち 愚行とも思えかねない色好みをエスカレートさせ 戦時中の軍部の圧力にも屈しなかった *視覚のみならず 嗅覚や触覚といった 言語化しづらい五感の表現を 敢えて駆使して 圧倒的なスケベの描写を極めた *近代以前の文学の伝統でもあった口承文学 声に出して言葉を読む音読の重要さを 再認識させた などと 賞賛の限りを尽くします(笑) そして 谷崎文学の良き読者になるためには *根っからのスケベであること *既成の道徳観に縛られない 人間を愛する寛容さを持つこと *漱石を好むような 悩める知識人であってはならない *常に何かを崇拝し続け その対象を節操なくコロコロ変えること *権力と 一切の関わりを持たないこと *老いても なお悟らないこと といった条件を挙げています どうです? 読み手の皆さんは 良き谷崎読者になれそうですか? 書き手はもちろん、、、?(苦笑) そして最後に 谷崎がもう2~3年長生きしていたら 間違いなく 川端より先に ノーベル文学賞を獲ったであろう と語ります 谷崎の独特の美の世界は 特にイタリアでの評価が高かったそうで なるほど! という感じもします(笑) ちなみに 当時 谷崎 川端 三島の3人が ノーベル文学賞の候補とされていた理由として 同性愛を積極的に作品世界に 取り入れていた点があり それが世界の文学世界に 高く評価されていた可能性があるそうです 宗教の縛りがない日本では 古来からの色好み文化も相俟って 同性愛が堂々たる文学テーマとして取り上げられていて それが 当時の世界にとっては 先進的なものの見做されたそうです そうなんだ~ なんだか ちょっと 面白いですね! まあ 確かに 漱石も 大江さんも 良いけれど やっぱり ねえ?(笑) この島田さんの 日本文学史 谷崎礼賛以外にも 興味ある指摘が随所にあって *雅 と 野蛮 は 決して矛盾しない概念で 古来の雅とは 暴力的で破壊的なものも含んだ複雑な美意識であった *太宰が描く世界は はまると危険でもあるけれど 絶望は 最初は苦いけれど 噛みしめると結構甘くなることを 教えてくれる *世代交代を推し進めるとき ひとつ前の世代との確執の過程で 二世代前を ロールモデルや理想とする傾向がある *文学は経済と連動している 日本の経済規模 世界経済におけるポジションにより 書かれる小説の中身が ずいぶん変化してきた *文化は多様性を失うと衰退するが 多様性の確保に必要なのは 歴史に学び それを応用してリニューアルすることである などといった 文学以外の世界にも関わる事柄についても 言及されています 新書だったので ササッと読めて なおかつ 谷崎礼賛のみならず(笑) 色々と面白いコンセプトに接することも出来て 読後にお得な気分になりました! うーん それにしても 最近 文学を読んでいませんねえ カズオ・イシグロさんも パスしちゃったし 人生に潤いがなくなっちゃうかな?(苦笑)
高橋医院