天平の色
平安時代に使われていた 鮮やかな色を復活させたい そんな思いから 古代から使われている 植物染めの復活を推進している 京都の染織工房の染め師さんの ドキュメンタリー番組を見ました 日本の色には 独特の美しい呼び名があって その数は 300~400種類あまり 青系色だけでも 藍 紺 群青 露草など20以上の名称があり 世界に類を見ない多さ 豊かさを誇っている しかも 美しく 自然になぞらえた つつましさ 確かさがある そんなことを 本を読んで興味を持っていましたが いかんせん 日常の生活では 和の色なんて何の馴染みもありませんから 興味はあるけれど リアルさはない といった状態でした だから 「失われた色を求めて ~植物染め・伝統100色を今の世に」 というタイトルの この番組に 興味を持った次第です 主人公の 京都の染司の染織史家・5代目 吉岡幸雄さんは 植物染めの美しさを追求されています 染料の原料のほとんどが植物で 本当に美しい色が出るそうです かつては 世界中で天然の植物染めが行われていましたが 産業革命で化学染料が発明されて以来 その簡便さ 安価さに押され すたれてきたとのこと 日本でも 江戸時代までは植物染めでしたが 明治以降は化学染料を用いた染色が主流となり 植物染めは忘れられてしまいました しかし 吉岡さんは 正倉院に残されていた 平安時代の衣装の切れ端を見て 1000年以上のときを経ても 全く輝きを失っていない色の美しさに 驚かれました 化学染料を用いた染物では こんなことはあり得ない 植物染めの偉大さを実感され 回帰していかれたそうです 化学染料全盛の世で失われてしまった 日本色を再現するために 古来の文献にあたり かつての日本の色の染料 染め方を研究する 日本各地の農家とコラボして 染色の材料となる植物の栽培を行う そうして得られた貴重な植物染料を用いて 全て手作業で染める 確かに 植物染めの色は 美しくて そして存在感があります 昔造られた甲冑に織り込まれた糸の赤は 今でも全く色褪せておらず 見る者を圧倒するような 凛々しさ 気高さを感じます 普段見慣れている色とは異なるのが 一見してわかります 素人目にも 植物染めの素晴らしさが解るような気がしました 平安時代は 日本の歴史上 最も色が豊かな時代だったそうです 源氏物語では さまざまな色に溢れた描写が繰り返しでてくるそうで その色の名前も 自然豊かで美しい 日本人の愛した色は 美しい景観を見つめて それを自らの衣装や 絵画 工芸などに表し 物語や歌のなかに託してきたもの 吉岡さんは 日本の色についてそう語られ 生涯かけてその復活を目指したいと言われます 番組ではナレーターが 源氏物語のなかで 源氏が さまざまな女性に贈る衣料の色を 指示する場面を朗読します 紅梅 葡萄(えび)色 桜色 浅はなだ色 濃い紅 赤 山吹 青鈍(あおにび) 梔子(くちなし)色 聴(ゆるし)色 そして それらの色を どのように重ね合わせていけば美しいかも思案します ここで言い表された和の色 無粋な書き手は 哀しいかな ほとんどイメージすることができませんが 色の重ね合わせで 美しさがさらに際立つことは想像できますし とても興味を持ちました 実際に どのような色が どんな植物を原料にした染料で どのように染められるかは 次回詳しく説明することにしますが うーん 和の色か、、、 ちょつと インスパイアされてしまいました
高橋医院