胃食道逆流症
欧米では最も高頻度にみられる
消化器疾患のひとつですが

日本でも 患者さんの数は増加傾向にあります

<胃食道逆流症 逆流性食道炎の頻度>

胸やけなどの症状を自覚し 
内視鏡検査で食道にびらんの存在を認める
びらん性胃食道逆流症の患者さんは

日本人全体の10.5%ほど存在すると
推定されています

さらに 
内視鏡検査で確認はされていないけれど
自覚症状がある患者さんの数は

びらん性胃食道逆流症の約2倍と推測されています

しかし 
内視鏡検査で重症度を判定するLA分類で
重症とされるC Dは
びらん性胃食道逆流症の3%程度で 
重症例は少ないようです
(LA分類については あとで詳しく説明します)


<胃食道逆流症の患者さんは増えている>

年齢とともに増加 
特に女性で増えているのが特徴です

性別 年齢別のGERDの患者数を示すグラフ

また最近は 若年層でも増えています

男性は 
肥満の中年層に多く 比較的軽症で

女性は 
痩せて腰が曲がった高齢者に多く 重症例が多い

といった傾向を認めます


患者さんの数は 
1990年頃から急激に増えてきました

1980年代は1.6% 
1990年代になると2.5%
2000年代には9.8%と増え
2000年代半ばには18.9%に達しています

GERD患者数の経年的増加を示すグラフ

現在は 増加傾向は頭打ちになっています


<どうして患者さんの数が増えたのか?>

患者さんの数が増えた原因として 
以下のことが推察されています

*生活習慣の欧米化

*ピロリ菌感染者の減少による胃酸分泌の増加

*肥満による胃酸逆流の増加

*睡眠時間の短縮

*ストレスによる中枢性の食道知覚過敏


<ピロリ菌との関連>

胃の中に生息するピロリ菌は 
萎縮性胃炎の原因となりますが

ピロリ菌感染者の割合と
胃食道逆流症の頻度は逆相関し
特にアジアで その傾向が著明です

ピロリ菌感染者の割合と胃食道逆流症の頻度の逆相関を示すグラフ

ピロリ菌で胃炎が起こると 
胃酸の分泌が減るためと考えられ

日本人のピロリ菌感染が減少したことが
胃食道逆流症が増加した原因のひとつと
推察されています

日本人のピロリ菌感染の減少を示すグラフ

1988年と2005年の比較では
ピロリ菌感染率は 
70.5%から52.7%に低下し

胃食道逆流症の頻度は 
逆に4.8倍に増加しました

但し ピロリ陰性例でも
胃食道逆流症の頻度は増えているので
ピロリ菌感染以外の因子も
患者数の増加に関与していると推察されます


@ピロリ菌除菌治療が逆流性食道炎に及ぼす影響

胃炎をともなうピロリ菌感染者には
発癌予防のために
積極的に除菌治療が行われていますが

ピロリ菌を除菌すると 
胃酸分泌能が高まるので
除菌治療後に 
胃食道逆流症が増えるのではないかと懸念されました

確かに
除菌後に5~10%の人は
胃食道逆流症になるとの報告もありますが
胃食道逆流症が起こっても 
一時的なもので  多くは軽症です

但し 
食道裂孔ヘルニアがある人 
肥満の人は
除菌後に長期間の治療が必要な
胃食道逆流症になることがあるので
注意が必要です



高橋医院