胃食道逆流症の分類
今日は 胃食道逆流症の分類 について解説します 胃食道逆流症は 内視鏡検査で見える 食道粘膜のびらんの有無により @びらん性胃食道逆流症 目で見えるびらんが存在する @非びらん性胃食道逆流症(NERD) びらんは観察できない のふたつに大別されます <びらん性 胃食道逆流症> @特徴 日本の胃食道逆流症の 30~40%を占めます 胃液の病的な逆流があり 食道にびらんや潰瘍が起きているタイプで 高齢 男性 喫煙との関連が大きく 酸分泌抑制薬による治療に良く反応します 80~90%は軽症例で(全体では30~35%) 重症例は10~20%(全体では5%未満) とされています @重症・軽症の判定 LA分類という 内視鏡所見による重症度分類により行われます 具体的には *Grade A 粘膜傷害が5cm以下 *Grade B 5cm以上 *Grade C 粘膜傷害の癒合が全周の75%以下 *Grade D 粘膜傷害の癒合が全周の75%以上 の4段階に分けられ A Bは軽症 C Dは重症です LA分類による評価は *酸の逆流の程度 *胸やけの重症度 *薬剤治療反応性 *維持療法中の再発リスク などの さまざまな指標と相関するので 臨床的な意義があります <非びらん性 胃食道逆流症 NERD> @特徴 日本の胃食道逆流症の 60~70%を占めます 胃液の逆流があり 胸やけなどの症状があっても 内視鏡による観察では 食道にびらんや潰瘍がないタイプです 体重が軽い女性に多く 食道裂孔ヘルニアの合併が少ない 酸分泌抑制薬による症状改善率は びらん性55.4% 非びらん性35.8%で 非びらん性は 有効率が有意に低い @3つのタイプの病態が混在しています *真のNERD(40%) 病的な酸逆流がある 酸逆流の関与が大きい *逆流性知覚過敏(35%) 病的な酸逆流はないが逆流症状がある 軽微な逆流への感受性 食道知覚過敏の関与が大きい 軽微な酸の逆流 または 酸以外の物質の逆流 に反応するタイプがある (それぞれ20% 15%) *機能性胸やけ(25%) 逆流が認められないのに胸やけ症状がある 食道知覚過敏の関与が大きい このように 病態形成に病的な酸逆流が関与する 真のNERDは40%に過ぎず 残りの60%を占める 逆流性知覚過敏 および 機能性胸やけ では 病的な過剰な酸逆流は認めません 非びらん性胃食道逆流症では 酸分泌抑制薬による症状改善率は低い と述べましたが その60%では 病的な酸逆流が病態形成に関与していないので 酸分泌抑制薬の効果が悪いのも 当然かもしれません こうした 病的な過剰な酸逆流が病態に関与せず 酸分泌抑制薬が効かない 逆流性知覚過敏 および 機能性胸やけ を どのようにして治療するかが 新たな臨床的問題として認識されています それについては 稿を改めて詳しく解説します
高橋医院