今日は 糖尿病性神経障害の症状について説明します

症状をダメージを受ける神経別にまとめた図

神経障害は ダメージを受ける神経の種類により

*感覚神経障害

*運動神経障害

*自律神経障害

の3つに分類されます


<感覚神経の障害>

まず 末梢の感覚神経から障害が現れてきます

手や足の先から 
 そして左右対称に出現してくるのが特徴で

*手や足の指先がじんじんしたり 
 しびれや痛みを感じたり
 虫が這っているような知覚異常

*足先の冷感 ほてり感

といった症状を呈します

感覚神経の障害をまとめた図

最も典型的な初期症状は 
両足の裏のしびれ 感覚鈍麻

「足の裏に皮が一枚余分に貼っているような感じ」

「素足で歩いているのに 靴下をはいているような感覚」

などと表現されます
 
やがて 
しびれはだんだん上の方へと広がり始め
両手指も先端からしびれ始めます

しかし 痛み しびれを感じないまま 
潜在的に進行する患者さんが
約半数おられます


<運動神経の障害>

さらに進行すると 運動神経にも障害が現れはじめ

*筋肉に力が入りにくくなる

*足の力が入りにくくなったり 
 腓返りが起こりやすくなる

腓返りを起こしている人のイラスト

*顔面神経麻痺や外眼筋
 (目を動かす神経の動眼神経や滑車神経)が
 麻痺を生じて 物が二重に見える

*足の内在筋の萎縮 足の変形

といった症状が出ます

運動神経の障害をまとめた図

<自律神経の障害>

自律神経が障害されてくると

*起立性低血圧(立ちくらみ)を起こす

*腸管の運動に異常を来して 
 便秘や下痢を繰り返すようになる

*膀胱の働きに異常を来して 
 排尿ができなくなる
 排尿時間の延長 回数の減少

*インポテンツ

*発汗障害 
 上半身の発汗亢進 下半身の低下

といった症状が出ます

自律神経の障害をまとめた図


<危険な症状>

神経障害が さらに進行すると 
命に関わる深刻で危険な症状が出てきます

@無自覚低血糖

低血糖が起こっても 
動悸や発汗などの警告症状を自覚しないので
重症化 昏睡する可能性があります

@無痛性心筋梗塞

心筋梗塞が起こっても
痛みに気付かず(無痛性心筋梗塞)
発見が遅れて 
重篤化を招くリスクがあります

@足潰瘍 足壊疽

末梢知覚神経の障害が進行して 
知覚が低下した結果
怪我をしたり 炬燵などで火傷をしても
気付くのが遅れ
そこが化膿して壊疽を起こしてしまう
重大な合併症を招くこともあります

危険な症状をまとめた図

足が腐って切断しなければならなくなる
糖尿病性壊疽の多くは
神経障害で知覚鈍麻をきたした足に
小さな傷が出来ることから始まります

糖尿病性壊疽の進行を示す図

傷の原因は 
靴擦れや深爪などごく些細なものが殆どですが
足がしびれて痛みを感じないと手当が遅れます

痛みを感じないことを示す図

また 糖尿病では 
血行障害や免疫力の低下によって治癒力が弱っているので
細菌が入り込んで感染が広がります

このため 糖尿病の方は 
入浴の際などに足に傷がないかどうかを
目で見て確かめる事を習慣づける必要があります

足のチェックポイントをまとめた図

<対策>

他の合併症と同様
血糖コントロールをしっかり行って 
その進行を未然に防ぐことが大切です

初期からの血糖コントロールが良好ならば 
合併症は発症しませんし

初期~早期の神経障害は 
血糖コントロールで治療できます

しかし 中期~後期になってしまうと 
非可逆的になるので
症状に対する対症療法が行われます

また 日常生活での注意としては

*歩行などの下半身の運動を行う

*手足をよく観察し
 皮膚の色の変化 外傷や水虫がないかどうかチェックする

*靴擦れをしないように 
 きちんと足に合った靴を選ぶ

*あんかや炬燵 風呂の温度など 
 火傷に気をつける

*禁煙に心懸ける

*手足のマッサージをする

*異常に気が付いたら医師の診察を受け
 早めの処置を受ける

といったことが大切です

<治療>

軽症例では
頭痛や腰痛の痛み止めに用いられる
非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)も有効です

中等度以上では

*三環系抗うつ剤

*末梢神経痛覚阻害薬 プレガバリン

*中枢性痛覚抑制薬 デュロキセイチン

*抗けいれん薬 カルバマゼピン ガバペンチン

*抗不整脈薬 メキシレチン

*アルドース還元酵素阻害薬 エパルレスタット

アルドース還元酵素阻害薬の作用機序を示す図

などが用いられ

高度例では 
麻薬製剤のオピオイドも用いられます

神経障害は 
他の合併症に先駆けて起こってくるので
糖尿病の進行 合併症発見の重要なサインです

特に両足の足先 足の裏に違和感を覚えたら 
早目に受診してください


高橋医院