今日はアレルギーの
疫学 遺伝の関与について解説します


<疫学>

アレルギーが原因の病気の患者さんの数は
とても増えていて

日本では 国民の30%以上が
何らかのアレルギーを持っていると言われています

気管支喘息アトピー性皮膚炎は 
10人に1人

花粉症は  10人に2人

という計算です

日本で各種アレルギー疾患が年々増加していることを示したグラフ

@喘息

*1960年代の罹患率は
 わずか1%でしたが
 2000年には
 小児で10%以上 
 成人で6~10%に増えました

*1982~2002年で2倍に増加し
 その後 減少傾向にあります

気管支喘息患者数の経年的増加を示すグラフ

*若年例では男性に多く

*思春期以後は女性に多い

*成人では中高年発症が多い

のが特徴です

性別 年齢別の患者数を示すグラフ

世界的に見ると

*開発途上国より先進国に多い

*寒冷地より温暖地に多い

傾向があります


@アレルギー性鼻炎・花粉症

*1960年代後半から増加し始め
 1998年に29.8%だった罹患率が
 2008年には39.4%まで増えています
 
 花粉症は
 19.6%から29.8%に増加しています

アレルギー性鼻炎・花粉症の増加傾向を示すグラフ

*都市部での増加が著しく
 住宅事情の変化による抗原量の増加が
 関連していると推測されます

*季節性スギ花粉症が 
 通年型鼻炎より多くなってきました

季節性スギ花粉症が 通年型鼻炎より多くなってきたことを示すグラフ


*10代から増加し始め 
 40代がピークで
 60代から減少し始めます

10代から増加し始め 40代がピークで60代から減少することを示すグラフ


<アレルギーが増えている理由・環境因子>

@現代の環境変化が アレルギー増加に関与しています

原因として

*住環境の気密性によるダニの増加

*喘息を起こす大気汚染

*ホルムアルデヒドなどのシックハウス症候群

*タバコ

*食品添加物

*ストレス

*過保護による心理的な問題

などが推定されています

ダニ数の経年的増加を示すグラフ

ですから
住環境の整備 掃除 食事療法 ストレス解消などが
対策として重要になります

原因と考えられる因子をまとめた図


@衛生仮説

環境変化が 
アトピーやアレルギーにも関与するという説で

1989年にイギリスのStrachan博士が
アレルギーの子どもを対象とした疫学調査をもとに
提唱しました

*衛生環境の改善

*少子化にともなう乳幼児期の感染症リスクの低下

などがアレルギー増加の一因ではないか という考え方です

衛生仮説について説明した図

一般に 胎児および新生児の免疫は
アレルギーになりやすい状態にあるといわれていますが

乳幼児が自然環境の中で
さまざまな感染症にかかることで
正常な免疫機能の発達が助けられ

その結果として
アレルギーリスクが低下すると言われています

昔に比べ 感染症が減り アレルギーが増えたことを示すグラフ

そうした説を裏付けるデータとして

*細菌成分のエンドトキシンが高い環境で育つと
 アレルギー疾患になりにくい

*感染症が減少すると
 アレルギー疾患 自己免疫疾患が増える

といった事実があります

上のグラフに示すように
結核や寄生虫感染の罹患率が減るとともに
アレルギー性鼻炎などのアレルギー患者さんの数が
増加しています

つまり 
感染が少ない過度に衛生的な環境では
アレルギー疾患は増加するのではないか?

ということです

このような現象は なぜ生じるのか?

推定される機序として

*感染により生じるエンドトキシンが
 アレルギーの原因のTh2リンパ球を抑制する
 Th1リンパ球を誘導するので
 ある程度の感染があるとアレルギーが起きにくい

*寄生虫感染が起こるとTh2反応が起こるので
 同じTh2反応で生じるアレルギーは
 逆に起こりにくくなる

といったことが推定されています

原因と考えられるTh1 Th2バランスを説明した図


ある程度の細菌や寄生虫の感染を経験した方が
アレルギーになりにくい

というのです

但し
感染症は既存のアレルギーに対しては
増悪因子になります


<遺伝の関与>

子どもがアレルギーになる確率は

*両親ともにアレルギーだと 約50%

*一方がアレルギーだと 約30%

*両親にアレルギーがないと 約10%

ですので かなり遺伝率が高いことになります

かなり遺伝率が高いことを示すグラフ
かなり遺伝率が高いことを示すグラフ2

また 別の報告では 子どもがアトピーになる確率は

*両親ともにアトピーだと 50~75%

*片親のみアトピーだと 25~30%

*兄弟姉妹がアトピーだと 20~25%

*家族にアトピーなしだと 10~15%

ということで
家族にアレルギーの方がいると
アレルギーになる可能性が高い 

一方 双子の研究では

*遺伝子が同じである一卵性では
 ともにアトピーになる確率は77%

*遺伝子の違う二卵性では
 ともにアトピーになる確率は15%

と 報告されています

このように
アレルギーへの遺伝の関与は
しっかりとしたものがありますが
100%遺伝するわけではありません

それは
アレルギーを起こす遺伝子が一つではないからで

アレルギーには
遺伝と環境の両方がともに関わっているのです

アレルギーには 遺伝と環境の両方がともに関わっていることをまとめた図

最近は 遺伝子の網羅的解析により

複数のアレルギー疾患で共通して認められる
アレルギー疾患に特有な
遺伝子多型(アレルギー関連遺伝子)
の存在が明らかになっていて

それらは
LRRC32 IL18R1 IL-33R IL-13 TSLP 
といった
アレルギーを引き起こす分子の多型であることが
証明されています

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