夜 眠れません!

との訴えで来院される患者さんは
少なくありません

でも 眠れなければ不眠症か? というと
そこは何気に微妙なところなのです


<不眠症とは?>

そもそも 不眠症とは 
どういう状態を指すのでしょう?

アメリカ睡眠学会の定義によると

睡眠の開始と持続 
あるいは睡眠の質の障害が繰り返し見られ

*疲労 気分の低下 いらいら 
 全身倦怠感 認知障害

*社会生活や職業生活に支障をきたし 
 生活の質が低下する

*子供では 
 学業成績の低下などを認める

といった

何らかの
昼間の生活における弊害がもたらされる状況
不眠症と見做されます

つまり

睡眠に関するトラブルがあることで 
昼間の生活に支障があるか?

その点がポイントになるようで

夜眠れなくても 
昼間の生活がOKならば 
不眠症ではない

不眠症の診断基準

日本の診断基準でも

入眠困難 中途覚醒 早朝覚醒
慢性的に回復感がない 
質の良くない睡眠が続く

といった訴えがある患者さんで 
日中の障害が認められる場合

となっていて

具体的な日中の障害としては

*疲労 倦怠感
*注意力 集中力 記憶力の低下
*社会生活 職業生活の支障 学業の低下
*気分障害 焦燥感  
 気分がすぐれず イライラする
*日中の眠気
*やる気 気力 自発性の減退
*職場や運転中の過失や事故
*緊張 頭痛 胃腸症状
*睡眠に関する心配 悩み

が 挙げられています

実際に 日本の統計でも
睡眠障害の症状を訴える人は
20%以上いるのに

睡眠障害により日常生活の障害があると不眠症であることを示す図

そのうち本当に治療が必要な人は
6~8%で

睡眠障害があることと 
不眠症は 
別ものと考えるべきで

睡眠障害により 
日常生活の障害があるかどうか?

あれば不眠症

ということになります


<不眠症のタイプ>

さて ホンモノの不眠症ですが 
以下の3つのタイプがあります

@入眠障害型 
 
 寝床についても 
 30分~1時間以上眠れない

@中途覚醒型
  
 いったん眠りについても
 翌朝起床するまでの間 夜中に
 何度も目が覚める

@早朝覚醒型
  
 通常の起床時間の
 2 時間以上前に目が覚め 
 その後眠れない

不眠症のタイプをまとめた図

日本人の不眠症は

20~30歳代に始まり 
加齢とともに増加し 
中~老年で急激に増加し

男性よりも女性に多い傾向があります

入眠障害型は 
各年代ともみられますが

中途覚醒型は 
他のふたつのタイプより頻度が多く 
60歳以上で特に多い

早朝覚醒型は 
いちばん頻度が少なく 
やはり60歳以上で特に多い

年齢別 タイプ別の不眠症患者数を示すグラフ

<不眠症の原因別分類>

厚労省の不眠症の
診断・治療・連携ガイドラインでは

不眠症を原因別に 
以下のように分類しています

一過性の適応障害性 
 ストレスが原因で急性発症し 3か月未満に消失する

別の病気による 痛み かゆみ 呼吸困難 頻尿 などが原因で起こる不眠

不適切な日常の行動・習慣(寝る前のカフェイン ニコチンの摂取など
 による不眠

薬物による不眠(パーキンソン病治療薬 副腎皮質ステロイドなど)

うつ病などの精神疾患による不眠

精神生理性不眠

不眠症を原因別分類をまとめた図

このなかでいちばん頻度が高いのが 
最後の精神生理性不眠で
これが世間一般で言われている不眠症です

@精神生理性不眠

*眠れないことにとらわれ 
 眠ろうと努力すると 
 余計に眠れなくなる

*心理的要因 不眠への過度の不安により 
 覚醒レベルが上昇する

*眠れなかった経験による
 悪影響も原因となる

*完全主義 神経質な
 中高年の女性に多い

*寝室でない場所 
 いつもと違う入眠法により
 改善することがある

といった特徴があります

精神生理性不眠についてまとめた図




最後に 繰り返しになりますが

たとえ 
寝つくまでに時間がかかる 
夜中に何度も起きる 
といった訴えがあっても

昼間の生活に支障がなければ
問題なく  
不眠症とは診断されません

この点を 
ご理解いただければと思います


高橋医院