藍
京都の染師 吉岡さんの 日本古来の色を 古式ゆかしい植物染めで再現する試みの続きです 藍は 日本を代表する色 海外ではJapan blueとも呼ばれ 明治時代に日本に来た外人の眼には 日本は青い世界に見えたほど かつての日本は 暖簾 着物 のぼりなど 多くのものが青色で染められ おとぎの国のような雰囲気で あふれていたそうです 但し この藍こそが 染めるのがいちばん難しい色だそうで 蓼藍(たであい)という植物の葉から まず 蒅(すくも)を作ります 夏に葉を収穫し 2か月かけて乾燥させ 10月に臺のなかに入れて 水をかけて枯草菌を繁殖させます そして2か月に1回ほど切り返す こうして半年かけて発酵させ 蒅(すくも)ができます 蒅(すくも)作りは 今も昔も徳島で行われていて 藍師と呼ばれるプロの方々が 作業に携わっておられます 化学染料の出現により衰退しましたが 今でも数軒が残っているとのこと さて蒅(すくも)は 染め師に渡されますが この段階でまだ枯草菌は生きています 染め師は 染料からブクブクと泡立つ具合を見て 染める時間の長さを決めます 染める時間の長さで 色が微妙に異なるので まさに一発勝負です 染めてからすぐの布は 緑色に見えますが 水洗いのあと 空気に触れて酸化すると 青くなります こうして 染める時間を変えて 藍から さまざまな青を染め分けます 濃い青 紺色 薄い青 水色 薄い色の染め方の方が 時間調節が微妙で難しいそうです 濃いから薄い順に 青色の名は異なります 紺色 縹(はなだ)色 浅葱(あさぎ)色 水色 甕覗(かめのぞき) 青系色だけで 20以上の名称があるそうですが そのグラデーションを見ると ため息が出るほど美しい世界です 書き手は青色フェチですから 和の色の青のグラデーションは どれだけ長い時間見ていても飽きません 黄色は さまざまな色を作る 魔法の色です 刈安という植物をそのまま煎じると 黄色の染料になり 比較的簡単に作れます 黄色そのものも充分に美しいのですが 中間色を作り出すのに使われる 貴重な色なのです 例えば 藍で染めた布を黄色で染めると 青竹色と呼ばれる緑色になります 緑色の自然の染料は 世の中になく 全て藍と黄色の掛け合わせから 造られるそうで 藍の濃さと 黄色の加え方で 緑の深さが決まるとのこと 緑色もグラデーションがあり 濃いから薄い順に 青緑 常盤色 若草色 苗色 と呼ばれます このグラデーションも 青に負けず劣らず 美しい 青だけでなく 他の色も 黄色と掛け合わせると さまざまな中間色が出来ます このようにして 300~400種類とも言われる 世界に類を見ない多さ 豊かさの和の色が 出来上がっていくのですね 吉岡さんが こうして長年にわたり研鑽されて 植物染めで染め上げられた 多種多様な和の色は ロンドンの ヴィクトリア・アルバート博物館で 植物染めシルクとして 永久保存されることになったそうです このヴィクトリア・アルバート博物館 若き日の吉岡さんが 毎年2週間ほど通い詰めて 陳列されてある世界の万物を目のあたりにして 本物を追求しなければいかないと インスパイアされた場所だそうで そうした 吉岡さんにとって 宝物の宝庫のような場所に 自分が植物染めで染めた和の色の布が 納められるなんて なんだか幸せですよね でも 平安時代の伝統的な和の色を 長い時間をかけて 愚直にひたすら追い求めた 研鑽と努力の日々があったからこその 幸せなのでしょう 頭が下がりますし 羨ましいです、、、
高橋医院