喫煙により起こる病気
喫煙は さまざまな病気を発症させ 健康に悪影響を及ぼします <がん> タバコの煙に含まれている 発がん物質のため 喫煙者では非喫煙者に比べて がんがより多く発生します 喫煙に関連するがんとして 肺がん 口腔がん 咽頭がん 鼻腔・副鼻腔がん 喉頭がん 食道がん 胃がん 膵臓がん 肝臓がん 腎・尿路・膀胱がん 子宮頸がん 骨髄性白血病 などが挙げられています 男性では 咽頭がんリスクは なんと32.5倍にもなります @肺がん タバコの煙が直接 肺に入っていくので 肺がんが多く *喫煙者は非喫煙者に比較し 数倍から10 数倍も多く肺がんが発生する *男性では4.5倍 女性では2.3倍 肺がんで死亡するリスクが高い *喫煙開始年齢が低ければ低いほど 肺がんの発生リスクが高くなる ことが明らかにされています しかし 喫煙をやめることにより 発生リスクは非喫煙者のレベルに近づき 喫煙量が少ない者ほど 早くリスクが減るとされています <心臓・脳卒中・血管疾患> @タバコが心血管疾患に悪影響をおよぼす理由 *ニコチン タバコの煙に含まれるニコチンは 副腎皮質を刺激してカテコラミンを遊離し 交感神経系を刺激して 末梢血管の収縮と血圧上昇 心拍数の増加をきたします *トロンボキサンA2 強力な血管収縮および気管支収縮作用がある トロンボキサンA2の遊離作用も有しています *一酸化炭素 タバコ主流煙には 一酸化炭素が4%程度含まれており 血液中のヘモグロビンと強固に結合して(酸素の約250倍) 慢性の酸素欠乏状態を引き起こします *コレステロールの変性 タバコ煙はコレステロールの変性を促進し 血管内皮を障害するとともに HDLコレステロールを減少させ 動脈硬化を促進させます こうした機序により 喫煙者では 循環器疾患のリスクが増大するのです @リスクの増大 一日喫煙量が多いほど 心筋梗塞などの冠動脈疾患死亡リスクが 高くなります 一日20 本以内の男性喫煙者の 心疾患死亡率(年齢調整)の 相対危険度は4.2 倍 20 本を越える場合には7.4 倍 この傾向は 喫煙開始年齢が早いほど増大するため 若年で喫煙を始めた場合 壮年期になってからの健康への影響は 深刻となることが予測されます しかし 喫煙による冠動脈疾患の相対危険度は 喫煙をやめることにより減少・消失します また 喫煙による冠動脈疾患リスク上昇は 男性より女性で25%高く タバコ煙が 女性に対して より強力な有害物質として作用している可能性が 示唆されています @脳卒中 発症リスクは 男女とも一日喫煙量が多いほど増加しますが こちらも 禁煙により相対危険度は減少・消失します @腹部大動脈瘤 発症頻度を増加させ 大動脈瘤径の増大 破裂および死亡の危険因子となります @閉塞性動脈硬化症 主要な危険因子でもあり 特にバージャー病の強い発症および悪化要因で 患者さんのほとんどは喫煙者です <呼吸器疾患> @タバコが肺の形態 機能に及ぼす影響 喫煙者の末梢気道では 炎症や萎縮 杯細胞化生 粘液栓 平滑筋肥大 細気管支周囲の線維化等の 形態学的な変化がみられます また 肺の内部では 肺胞の破壊 小動脈数の減少 等がみられます 喫煙は 呼吸器の機能にも悪影響を及ぼします 人は加齢とともに 肺の働きが低下しますが 喫煙者ではそれがより急速で 呼吸機能(ガス交換)と 非呼吸機能(防御機能 代謝機能)が劣化して 気道の閉塞に至ります @慢性閉塞性肺疾患(COPD)への影響 喫煙の影響を受ける代表的な呼吸器疾患が 慢性閉塞性肺疾患(COPD)で 喫煙者のすべてが COPDを発症するわけではありませんが 喫煙は本疾患発症リスクの 80~90%を占めるとされています @その他の肺疾患 COPD以外にも 気管支喘息 特発性間質性肺炎 睡眠時無呼吸症候群 急性好酸球性肺炎 などが喫煙により発症しやすくさせ 病態を悪化させます 自然気胸は 80%は喫煙が関連していると考えられています <生活習慣病> 喫煙は 生活習慣病にも関与します! 生活習慣病患者では 喫煙により虚血性心疾患の発症率が 飛躍的に高まります 喫煙していると 糖尿病では 5.2倍 高血圧 脂質異常症では 2倍 糖尿病 高血圧の両方があると 13倍も リスクが高まります また 喫煙は 生活習慣病そのものの発症にも関連していて *喫煙により 善玉コレステロールのHDLが減少する *思春期に喫煙していると メタボになりやすい *喫煙本数が多いと メタボになりやすい *喫煙本数が多いほど 糖尿病になりやすくなり 腎症の発症や悪化がみられる といったことが明らかにされています <その他の疾患> @消化器疾患 ニコチンによる腸粘膜の血流障害などのため 胃・十二指腸潰瘍 慢性胃炎 クローン病などの 消化器疾患に罹りやすくなります @骨粗しょう症 @ホルモン異常 女性における更年期の早期発来 もみられます @うつ病 発症リスクは5~15倍にも上昇しています @その他 聴力障害や白内障の頻度も高くなり 老化に伴う脳萎縮も高度になりますが ニコチンなどが動脈硬化を 誘発・悪化させていると考えられます こうした喫煙による健康障害のほとんどは 極めて徐々に進行するため 初期段階は目に見えず 危険性を自覚できないだけに厄介です
高橋医院