<「卒中」ってなんだ?>

世の中には「脳卒中」と呼ばれる病気があります

医学用語的には「脳血管障害」と呼びますが
卒中」の響きはインパクトが強い!

脳卒中について説明する図

辞書を調べてみると
突然起こる」
というニュアンスのようですが

確かにこの病気は
突然 症状が現れてきます

卒中と書かれたポスター


その昔 冬の寒い日 
バイト先で外来をしていたら
高血圧と糖尿病の治療をしている患者さんが
いつもの薬をもらいに来られて

目の前で突然
言葉が上手くしゃべれなくなりました

あわてて救急車を呼んで
脳血管センターがある病院に運んでもらいましたが

まさに「卒中」でした

ちなみに 書き手が研修医のとき
医者になって初めて主治医になった患者さんが
脳出血の患者さんでした

その患者さんのお名前

意識はあるけれど言葉をしゃべれず
マヒもあり手足を動かせず
静かにベッドに横たわっていた姿

そばで悲観に暮れていたご主人の様子

全てリアルに覚えています


まあ そんな昔話はさておき(苦笑)
脳卒中の解説シリーズを始めようと思います


<脳卒中とは?>

脳卒中は 
さまざまな原因で
脳の血管に障害が起こる病気

脳の血管に障害が起こっている様子

頭痛 吐き気 
手足のしびれ マヒ
言葉が上手くしゃべれない
よだれが垂れてしまう
モノが二重に見える 視野が欠ける
上手く歩けない
意識がもうろうとする

そんな症状が 
まさに急に出現してきます

脳卒中の症状をまとめた図


脳卒中というのは
以下の3種類の病気をまとめた名前です

脳梗塞 血管が詰まる

脳出血 血管が破れる

くも膜下出血 脳の表面に出血する

脳卒中の3種類の病気を説明する図


それぞれの頻度は

*脳梗塞 70~80%

*脳出血 20~30%

*くも膜下出血 5~10%

と言われています

3種類の病気の頻度を示すグラフ


<なぜ「卒中」するのか?>

脳卒中で 急に症状が現れるのは
脳を構成する神経細胞の特殊性によります

脳神経細胞の写真

脳は 
大量のエネルギーを使用している臓器で
体重のわずか2%程度の重さしかありませんが

体全体が1日に使用するエネルギーの
25%を使っています

脳が大量のエネルギーうぃ使用していることを示すグラフ

心臓が拍出する血液の20%が脳に行き
血液の約12% 酸素の20%が
脳で消費されています

そして 一番のポイントは

脳の神経細胞には
予備力がないということです

肝臓の細胞や骨格筋の細胞のように
グリコーゲンなどとして
エネルギーを貯蔵していないので

脳の血管が詰まったり破れたりして
血流が来なくなると
血流により供給される酸素やブドウ糖が
すぐに不足してしまい

神経細胞がエネルギー不足で機能低下し
その細胞がつかさどっていた機能が侵され
上述したさまざま症状が現れてきます

血流が40%以下になると
脳の機能が低下してマヒなどが起こり
20%以下になると
短期間で神経細胞が死んでしまいます

血流が3分以上途絶えると
神経細胞は死んでしまうので
突然 症状が現れてくるのです

脳の神経細胞はエネルギーの予備力が少ないことを示す図

まさに「卒中」です


次回から
脳卒中の病気について説明していきます
高橋医院