脳梗塞は
発症の原因により
3つのタイプに分類されます

3つのタイプを示した図

<ラクナ梗塞>

@高血圧が原因で 細い動脈が詰まる

昔は一番多かったタイプですが
今は30%と減少傾向にあります

高血圧がいちばんの危険因子ですが
糖尿病や脂質異常症も
危険因子となります

脳の深い部分にある
太い血管から枝分かれした
直径1mm以下の細い動脈
狭くなり詰まることで発症します

ラクナ梗塞について説明する図

血栓の関与は
次に説明するアテローム梗塞ほどは
明確ではありません


1.5cm以下くらいの小さな梗塞を
起こすことが多く
単発ならば 予後は良いとされます

ラクナ梗塞について説明する図・その2


@症状

現れる症状は
運動マヒ 感覚障害が主体で
意識障害 失語症などの大脳皮質症状は
ともないません

睡眠中に起こりやすいと言われています

また 
症状の進行や変動は少ないとされています


@無症候性脳梗塞

症状がないまま(無症候性脳梗塞)
知らぬ間に多発していることもあり

無症候性の多発性脳梗塞は
認知症などにつながることも多いので
要注意です


<アテローム血栓性梗塞>

@動脈硬化が原因で ある程度太い動脈が詰まる

以前にも説明したように
動脈硬化は
高血圧 糖尿病 脂質異常症 喫煙 肥満
などで起こります

食生活の欧米化による動脈硬化の増加を背景に
最近 このタイプが増えてきて
今や脳卒中の30%以上を占めます

アテローム血栓性梗塞の増加を示すグラフ

高齢者に多く
睡眠中に発症しやすいとされています


内頸動脈 中大脳動脈 椎骨動脈 脳底動脈といった
頸から脳に至る動脈
脳内の直径5~8mm程度の太い動脈が狭くなり
症状が起こってきます

アテローム血栓性梗塞を起こした血管内の様子

通常は狭窄が50%以上になると
発症するようです

また 
頸動脈の血栓がはがれて脳に流れて詰まる
動脈原性脳塞栓も多く起こります

動脈原性でも
最終的には閉塞部位に血栓が生じて
それが原因で発症します


@動脈硬化になると血管が詰まる機序

動脈硬化により血管壁が厚くなり
血管の内腔が狭くなるので
血液の流れがよどんでしまいます


動脈硬化部位で盛り上がったプラークが破綻し
まずそこに血小板が付着して
血小板血栓ができます

また 血管内皮細胞が
加齢により傷みやすくなり
血小板が付着して血栓ができることもあります

血小板血栓が形成される様子


さらに血流が悪くなると
血液凝固系が活性化されて
その結果 
大型のフィブリン血栓も形成されます

フィブリン血栓が形成される様子


このように 動脈硬化による狭窄と
それが原因で生じた血栓の存在により
余計に血流の流れがよどんでしまい
悪循環を形成します

こうした過程を経て 最終的に閉塞するのです


@症状

血小板血栓そのものは小さいので
軽いマヒなどの症状で
直ってしまうことも多くあります

このときは あとで説明する
TIAと呼ばれる一過性脳虚血発作
先行することが多いようです

TIAの症状をまとめた図

ただ 当初は軽症でも徐々に増悪し
意識障害 失語などの皮質症状をともない
重症化する例もあります

再発しやすく 
介護が必要となる場合が多いようです


<心原性脳塞栓症>

@主に心房細動が原因で起こる

心原性脳塞栓症の患者さんの68.5%で
心房細動を認めます

心房細動による心原性脳塞栓症について説明する図

加齢 高血圧 糖尿病も関与します

心房細動が高齢者に多いので
心原性脳塞栓症も
80歳以上の高齢者で多い病気です

動脈硬化によるアテローム血栓性梗塞の増加より
高齢化にともなう心原性脳塞栓の増加の方が大きい
報告されています

脳卒中全体の26%を占めています


@心房細動により血栓ができる機序

心房細動が生じると 
心房が勝手に空打ちして
左心房から左心室に血流がスムーズに流れないので

左心房の中で血液の流れがよどんで
血栓ができてしまいます

この血栓がはがれて
流れて脳の血管で詰まるのです

血栓は 
血液凝固反応により生じる凝血塊で
梅干しくらいの大きさになります

さらに 
フィブリンという血液凝固タンパクが
表面を覆っているので 溶けにくいのです

心原性脳塞栓症の発症の仕方について説明する図


@症状

こうした血栓が飛ぶと
太い血管が詰まってしまうので
皮質領域を含んだ大きな脳梗塞が
突然 発症します

中大脳動脈系の閉塞が
最も多いとされています

心原性脳塞栓症が大きな梗塞を引き起こすことを示す図

こうした経緯で血管が詰まるので
ラクナ梗塞やアテローム血栓性梗塞と異なり
発作時に最も症状が重く
症状は突発的に完成します

重症化しやすく
予後が悪く死亡率は10%近くになります

特に 
内頚動脈閉塞は致死率が高いとされます

また 二次性の出血性梗塞も多い

複数の血栓が一度に 
または相次いで飛散することも多く
脳病変が複数起こることがあります

二次性の出血性梗塞について説明する図

発作は 
日中の活動時に突然起こり
運動マヒ 感覚障害 意識障害などが
一気に現れます
高橋医院