脳梗塞の検査 治療 予後について説明します


<脳梗塞の検査>

@頭部CT MRI検査

いわゆる脳ドックなどでは
頭部のCT MRI検査が行われます

症状が出たあとの診断でも 
CT MRI検査が行われます

脳梗塞のCT像

さらにMRA(磁気共鳴血管撮影)検査も行われ
動脈硬化や小さな梗塞を発見することができます


@頸動脈の超音波検査

しかし 
CT MRI検査は結果をみているだけで

脳梗塞の予防の観点から重要なのは
動脈硬化の程度を評価できる 
頸動脈の超音波検査です

頸動脈の超音波検査と所見

首の部分の超音波検査を行い
頚動脈の壁が動脈硬化で厚くなっているか
動脈の内腔が狭くなっているかが
100分の1ミリの精度でわかります

たとえばこの検査で70%以上狭くなっていれば
血栓内膜切除術を行い
脳梗塞の発症を予防できます

高血圧 高脂血症 糖尿病などの危険因子をもつ人は
定期的に頸動脈の超音波検査をして
脳卒中のリスクを評価すべきです


@高感度CRP

また近年は
血液検査で脳梗塞の発症リスクを評価する試みも
行われています

高感度CRPをはじめとする炎症マーカーが
血管の炎症の程度を反映しているとされ
この値が高いと発症の高リスク群と見做されます

高感度CRPについて説明する図

特にアテローム血栓性梗塞のリスクが高い人は
定期的な高感度CRPの測定が推奨されています

高感度CRPは
禁煙 減量 スタチン治療などで
改善することが報告されています


<急性期の治療>

発症直後から6~8時間以内の
超急性期に治療を開始し
途絶えた血流を再開させ 
脳のダメージを防ぐことが重要で

発症してから3時間が勝負
と言われています

急性期の治療について説明する図
@血栓溶解療法

ごく早い時期に 血栓を溶かす
*ウロキナーゼ 
*t-PA(組織プラスミノーゲンアクチベーター)
などの薬を直接投与すれば
血栓が溶けて血流が再開して
治る可能性が高くなります

発症3時間以内にこれを使えば
後遺症を残さず非常によく回復する人が
約5割も増えるので

疑わしい症状が現れたら 
少しでも早く受診することが肝要です

発症してから4時間半を過ぎると
詰まった部分の血管にダメージが広がり
薬で血栓を溶かしたときに出血する
出血性梗塞が起こるので
t-PAは使用できません

血栓溶解療法について説明した図

また 
重度の高血圧 糖尿病がある人も使用できませんから
高血圧や糖尿病があるひとは
常日頃から適切に治療してコントロールを
良くしておくべきです

血栓溶解療法の最大の合併症は
脳内出血で
投与後36時間以内に起こりやすいとされています


@血栓回収療法

t-PA が使用できない あるいは無効で
8時間以内なら
血管にカテーテルを入れて
局所で血栓を抜き取る血栓回収療法が行われます

血栓回収療法について説明した図

心原性血栓のように 
太い血管に大きな血栓が詰まった場合に
特に有効とされています


<予後>

ラクナ梗塞がいちばん予後が良く 
アテローム血栓性梗塞は中間
心原性脳塞栓は予後が悪い
とされています

各タイプの死亡率は
*ラクナ梗塞 0~1%
*アテローム血栓性梗塞 6%
*心原性脳塞栓 12%
です

脳梗塞の予後について説明した図

退院時の状況は
独歩で退院できる方は58%
車いす使用は16% 杖歩行は11%
寝たきりになる方が8%
死亡される方は7%です


障害の程度は軽度が60%で
比較的予後がよいとされています


しかし
要介護該当者の約40%は 
脳卒中後の後遺症の患者さんで

脳卒中が寝たきりの原因で一番多いことを示すグラフ


寝たきりの原因でも脳卒中が第1位で
40%を占めています

要介護になる割合は
*ラクナ梗塞 18%
*アテローム血栓性梗塞 25%
*心原性脳塞栓 59%
です

心原性脳塞栓の予後が悪いことを示すグラフ

元の仕事に復帰して
自立した生活ができるのは44%に限られ

残りの人たちは 
日常生活に何らかのサポートが必要になります


医療の進歩により 
急性期の死亡率は減りましたが
後遺症に苦しむ患者が増えているのが現状です

また 脳梗塞は
認知症の原因の約2割を占めます

認知症の原因の約2割は脳梗塞であることを示すグラフ

無症候性脳梗塞の繰り返しは危険因子で
特に皮質病変がある場合は 
認知症のリスクが高まります

無症候性脳梗塞の繰り返しで認知症のリスクが高まることを示すグラフ
高橋医院