女好きだけど 実は苦手?
クリムトの話を続けます 分離派結成以後のクリムトの画風を 端的に表現するとすれば 女性 エロス きらびやかさ ではないでしょうか? 官能的な表情の女性をモチーフにした絵を 黄金様式と呼ばれた 金箔などをふんだんに用いた 派手できらびやかな装飾で飾る 金色 黒色を用いて表現した 官能的な恍惚とした表情の女性 既成のモラルにとらわれない 表現の自由を訴え エロスを追求し エクスタシーを極限まで描きました そして 社会からは 神聖への冒涜と批判された 彼のそうした作品は 確かにとても衝撃的で 観る者に強いインパクトを与えます でも 書き手は 正直言ってちょっと苦手です 黄金様式は それほど心に響きません だから気にはなるけれど 熱烈なファンにはなれない 美術史専門家のなかには クリムトを 人であれ 自然であれ 美しいものへの憧れを語った耽美主義の人で 装飾的美しさにより 美の帝国を築き そこに安住の地を見出したデイ・ドリーマー と評する方もおられます クリムトは 目に見える現象の背後にある深淵に 存在の根拠を求めていて 彼の作品は 人の心の内や理念を 象徴的に表現する寓意画である 作品を観る者に 安易でわかりやすい共感をもたらさず 彼が何を訴えたいのか よくわからない だから観る者は クリムトの内心を探らざるを得なくなる そんな風に評価する方もおられます 確かに彼は 先駆的な芸術家がよくするような 自ら芸術理論を執筆したリ 作品の背景を説明することは 一切行いませんでした 自分自身は特別に面白い人間ではないし 話すこと 文章を書くのは 得意ではない と 自らについて語っていたとか でも どうして寓意の表現の対象となったのが 女性とエロスだったのでしょう? クリムトは 女性に多大なる興味を持ち 女性を知り尽くしていた 恍惚とした いやらしい女性の肖像画が大の得意で クリムトだから描けたと言える 運命の女 魔性の女 ファム・ファタルを描かせたら クリムトの右に出る者はいない しかもそこに 寓意的 象徴的なオブラートをかけている 従来の伝統を打ち破り 人間のエロス 官能性を表現し それを斬新に追求した 富裕層の夫人たちの肖像画が多く それは象徴的で 優雅さと官能性を融合させている そして描かれた女性は 実際の人生の平凡さと抑圧から解放されたように感じ とても喜んでいた クリムトが描いた女性 エロスについては そんな風に解釈されています 一方で クリムトには 女性に対して ある種の恐怖があったのではないかと 推察する人もいます 容易に抗しがたい女性の魅惑に どう対峙して どのように表現するか 業のように自らの内に感じる 女性のエロティシズムや 彼女達への欲望を なんとか芸術的に表現するために 装飾や黄金様式を手段として用いたのではないかと クリムトは 本能的に しかもかなり強烈に 女性が好きだったのでしょう ましてや彼には 女性を惹きつける強い力があり 女性達は彼の素朴な魅力を慕ったそうです アトリエには 常にたくさんのヌードの女性モデルがいて 彼に描かれることを望み それ以上の関係に発展することもしばしばありました 生涯独身でしたが 私生児は14人もいたとか しかし クリムトの女性との交際は 不運なものが多かったそうです 私は一度として 女性を愛していけないし 愛すべきでもなかった 交際は 常に女性にとっても自身にとっても 筆舌に尽くしがたい不幸をもたらした クリムト自身がそのように語り 実際に 付き合った女性たちや生まれた子供の 財政的支援はしましたが 家族としての生活は一切行わなかったそうです うーん 難しいですね そして 哀しいというか せつない ちなみに晩年のクリムトは エロスだけでなく 生と死をモチーフとして 陰の部分 死の不安も描きました そうしたモチーフの変化に 書き手はちょっと安心したりもしますが でも クリムトって どんな人だったのでしょう? 心の奥底で 何を感じ 考えていたのかな?
高橋医院