ウイルスの構造
ウイルスは 地球上で最小の微生物です <ウイルスの大きさ 形> @ウイルスの大きさ 細胞の1/1000程度 細菌の1/10程度 細菌は1ミクロンですが ウイルスは20~40ナノメートルです その姿は光学顕微鏡では捉えられず 電子顕微鏡を用いないと 見ることができません @ウイルスの形 球状 棒状 ひも状など ウイルスの種類により さまざまな形をしています 電子顕微鏡下で 直接見ることができます <ウイルスの構造・ヌクレオカプシド> ウイルスは 核酸とタンパク質で できています 核酸を取り囲むように タンパク質のカプシドが覆って 粒子を形成していて ヌクレオカプシド と呼ばれています <ウイルスの核酸> 核酸は 以前に説明したように 生物の遺伝情報を伝える物質です @核酸の種類 ウイルスは DNA RNAのどちらかを有していて DNAだと DNAウイルスと呼ばれ 天然痘 ヘルペス アデノ パピローマ などがその仲間です RNAだと RNAウイルスと呼ばれ インフルエンザ ライノ ポリオ ノロ などがメンバーです 最近話題のコロナウイルスは RNAウイルスです RNAウイルスの方が昔から存在していて DNAウイルスは新しく進化したものと 考えられています @核酸の存在様式 *二本鎖DNA *一本鎖DNA *二本鎖RNA *一本鎖RNA の4種類があります 一本鎖RNAを有するウイルスは プラス鎖RNAウイルス マイナス鎖RNAウイルス に分類されます プラス鎖RNAウイルスは ウイルスのRNAが そのままmRNAとして使えますが マイナス鎖RNAウイルスは ウイルスのRNAがmRNAとして使えず 相補的に合成したRNAをmRNAとして使い それぞれ複製します @DNAウイルス RNAウイルスの違い 植物に感染するウイルスの多くは RNAウイルスで 細菌 動物に感染するウイルスの多くは DNAウイルスです ゲノムサイズが大きいウイルスは ほとんどが二本鎖DNAで RNAウイルスはDNAウイルスよりゲノムサイズが小さく せいぜい3万塩基対ほどの大きさです また RNAはDNAより化学的反応性が高い構造を有していて その分 安定性は低く 複製の際に突然変異を起こしやすいのが特徴です ゲノムのサイズが大きくなると 複製時の不安定性は ウイルスの存続に致命傷になるので RNAウイルスは一定程度のサイズまでで より大きいサイズのゲノムは DNAウイルスとして存在すると考えられています @レトロウイルス RNAウイルスの中には 逆転写酵素という 自らのRNAをDNAに移し替える酵素を有するウイルスがいて レトロウイルスと呼ばれています レトロウイルスは 今後 色々なシーンで登場しますから 名前を覚えておいてください <カプシド> ウイルス粒子の外殻を形成するタンパク質が カプシドで 内部の核酸を保護する役目を担っています なお ウイルスの中には カプシドを持たないものも存在します 真菌 植物の細胞質に多く存在する2本鎖RNAウイルスで 感染力が弱く 病原性も低く 細胞質にずっと存在して 細胞を壊さずに内部で増殖します 細胞質に存在する プラスミドとの類似も指摘されています <エンベロープ> エンベロープは カプシドのまわりを包む リン脂質膜構造の被膜です ウイルスが作り出すエンベロープタンパクと 宿主細胞内でウイルスが増殖した後に 宿主細胞を飛び出すときに 引きちぎってきた細胞膜の断片から 出来ています こうした 宿主細胞膜との同質性を利用して 別の宿主細胞に新たに感染するときに 細胞にスムーズに侵入する際に機能すると 考えられています エンベロープが あるウイルスと ないウイルスがあります @エンベロープウイルス エンベロープを有するウイルスは エンベロープウイルスと呼ばれ インフルエンザ コロナ 麻疹 HIVなどが属します エンベロープの表面にスパイクが存在し それを用いて宿主細胞に付着することが多いです また エンベロープは脂質でできているので アルコールなどの有機溶媒で溶けます ですから アルコールは エンベロープを有するウイルスの予防に 使えるのです もちろん コロナウイルスにも有効です @ノンエンベロープウイルス エンベロープを有していないウイルスは ノンエンベロープウイルスと呼ばれ 下痢を起こすノロや 子宮頸がんの原因となるヒトパピローマなどが属します ノロウイルスの予防にアルコールが効かないのは エンベロープを持たないからで 次亜塩素酸などで消毒する必要があります
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