最近 ときどき 医院に
「すみません BCGの接種はできますか?」
という問い合わせがきます

皆さん ホントによく勉強されていますね
と感心しながら
書き手は電話に応対します


新型コロナウイルスにBCGが効くのでは?

新型コロナウイルスにBCGが効くのでは? と書かれたポスター

こうした情報が
最近 ネット上を飛び交っているようで

実は書き手も不勉強で
当院にいらした患者さんから
その情報をうかがったのです

不勉強な書き手は
最近は患者さんから
色々と教えていただくことが多いです(苦笑)

そこで 
名誉挽回のためにちゃんとお勉強して
ホットなトピックになっている
BCGとCOVID-19の関係について解説します


BCGは
結核予防のためのワクチンです

BCGのバイアル

日本では 予防接種法に基づいて
1951年~2004年までは
ツベルクリン反応が陽性でない子供に
幼児期に接種され
2005年以降は
ツベルクリン反応なしで
1歳になる前に接種されています

二の腕に
こんな痛々しい跡が残るのですよね

二の腕に残った接種の痕


このBCGが
COVID-19の発症率や死亡率に関係している
という情報が
ある日 ネットに公開され
大反響を呼ぶに至っています

但し 注意して欲しいのは
ニュースソースは
あくまでネットに公開された情報で
学術誌に掲載された論文ではありません

つまり
「この情報の信憑性には疑問がある」
ということです


さて その情報が報じたことは

国の健康政策の一環として
BCG接種を行っている国と
行っていない国を比較すると
行っていない国の方が
COVID-19の患者数が多い

ということ

国別のBCG接種の有無とCOVID-19感染者の関係を示したグラフ

行っているアジア諸国は
軒並み患者数が少ないのに対し

行っていないアメリカやヨーロッパでは
患者数が多い

COVID-19感染者数が欧米諸国で多く アジア諸国で少ないことを示すグラフ


さらに興味深いことに
ヨーロッパの地続きの隣国同士を比較すると

行っている国は患者数が少なく
行っていない国は多い

黄色の行っている
ポルトガル アイルランド ノルウエーは
紫色の行っていない
スペイン イギリス スウエーデンと比べて
患者数が少ないのです


ヨーロッパの隣国間でのCOVID-19感染者数の比較を示す図

この情報に世界中のマスコミが飛びつき
CNNやニューズウイークといった
影響力のあるメデイアが
COVID-19関連トピックとして報道したため
多くの世界の人たちが興味を寄せるに至りました


免疫学の権威で
ワクチンにも造詣が深い宮坂昌之先生は
記者さんのインタビューに
自ら作成されたスライドを使って応じられ

国別のBCG接種の有無とCOVID-19感染による死亡者数の関連を示すグラフ

COVID-19の患者数だけでなく
人口100万人あたりの死亡者数も
赤字で示すBCGを行っている国は
黒字で示すBCGを行っていない国に比し
低い傾向が見られることを
明らかにされています


ということで

BCGはCOVID-19の感染や重症化を
防ぐのではないか?

という期待があっという間に巷に広がり

文頭に紹介したような問い合わせが
当院にもくるようになったのです

つづく

 

高橋医院