悩ましさに事欠かないGW
MIT Technology Reviewという いつも面白いニュースを送ってくれるサイトから 「新型コロナ対策について 過去の災害が教えてくれること」 という興味深いレポートが届きました イリノイ工科大学で技術史を教える マー・ヒックス先生へのインタビューです ヒックス先生は 災害が社会や政治に及ぼす影響について 長年研究してこられ 災害は多くの場合 *長期間にわたる 構造的不平等 構造的破綻を明らかにし *権力者によって無視されてきた 現在進行中の問題について 人々に考えることを余儀なくさせ *権力者に その構造的不平等の修正を強制し 規制や法律の変化が起こる と指摘されます 面白いですね! たとえば 19世紀半ばにロンドンで発生したコレラは それまでおざなりにされていた ロンドンの下水道整備を進ませ 人々が飲む飲料水に 排泄物が混ざらないようになりました ヒックス先生は 今回のパンデミックも 例にもれないと言われます 今回の新型コロナウイルスのパンデミックは 長年にわたるシステム インフラの不具合が原因で 人々が気づいてこなかった 現在の医療 政治 経済 社会システムの歪みから 生まれてきたものである 環境破壊 グローバル経済といったワードが 思い浮かんできます そしてヒックス先生は パンデミックへの対処の仕方の難しさを 指摘されます 公衆衛生上の災害で難しいのは 民主主義国家においてさえ 公衆衛生対策は 相当強制的でなければならないこと そのような専制的な考え方は 多くの点で危険な問題が発生し 危機の瞬間には 政府が行き過ぎる傾向がある 情報テクノロジーが発達した現代で悩ましいのは スマホ情報を利用した感染発見 予防アプリなどによる 徹底したウイルス感染対策が プライバシー侵害に結びつくリスクがあることです しかし トップダウンの公衆衛生対策がなければ ウイルスの蔓延を緩和し防止することができません パンデミックに堅牢な対応をとるためには 本当に厳格な専制的な考え方に基づく措置が必要となり 監視とプライバシーに対する人々の権利の 侵害が必要だと思える方法で 対処せざるを得なくなる そして そのような対策が一度始まってしまうと より大きな善のためにプライバシーを奪うような対策が ますます地滑り的に増えていくことになりがちで それを押しとどめるのは非常に困難になる 確かに悩ましいジレンマです 日本でも 緊急事態宣言の強制力をめぐり さまざまな議論がなされています 書き手は 経済的補償をともなわないお願いだけでは 限界があると思います また 違反に対する処罰をともなうもっと厳しい法律を 新たに設定すべきだといった声も聞こえてきますが そうしたら上述したリスクが発生し得ることを 覚悟しないといけないのかもしれません 一方で 日本より潤沢な経済補償をしている欧米で それでも自粛が長期に及ぶと 自然発生的に自粛反対デモが起こるのを見ると 今の状況への対応の難しさを 痛感せざるを得ません ヒックス先生は 今回のパンデミックで特徴的なことは *アメリカを含む多くの国々で 準備ができていなかったために 世界規模で事態が非常に急速に悪化したこと *パンデミックのスピードが速いあまり 各国が自国内の対策に手一杯で 世界レベルでの新しい政策 規制を作る気運が 生まれないこと と指摘されます 確かに ワクチン開発 経済対策 途上国への援助など 世界レベルで考えなければいけないことは 多いと思いますが 今はそんな余裕はとてもまだありませんね 巣ごもりのGW 残念ながら 考慮すべき悩ましい問題には 事欠かないようです、、、
高橋医院