今日は
心室に生じる頻脈性不整脈について
解説します

<心室頻拍>

心室が洞結節の指令とは無関係に
1分間に150~200回も
勝手に興奮する状態です



心室内で
異常な電気的興奮 リエントリーが連発し
心室性期外収縮が3個以上連続します

心室性期外収縮が引き金になることが多く
リエントリーが起こって
心室頻拍の状態になります

心室に
狭心症 心筋梗塞 重症な心不全などの病気があるときに
起こりやすい不整脈で
心室細動に移行するリスクがあります


心拍が1分間に120回以上になり
動悸が激しくなります

一方 心室の収縮は不規則で
ポンプ機能は不充分になるので
血液拍出量が減り 苦しくなります

症状が30秒以上続く持続性と
30秒未満で治まる非持続性があります

30秒以上続く
持続性の動悸 息切れ めまい 失神などは
危険なサインです


発作を繰り返すようなら 要治療で

抗不整脈薬を用いた治療
カテーテル治療
埋め込み式除細動器(ICD)
などで 発作を予防します





<心室細動>

心臓が原因で生じる突然死の原因のひとつで
とても危険な不整脈で
これが原因で
年間に2万人以上が亡くなっています

予兆なく 突然生じるので 余計に危険です



不安定狭心症 心筋梗塞 心筋症
などが原因で起こりやすいですが
心室頻拍 発作性上室性頻拍などからも
移行することもあります



遺伝性のものもあり
あとで説明する
QT延長症候群 ブルガタ症候群も原因となります


強いストレスが原因であることが多く
午前中に起こりやすい

心室内で異常な電気信号が同時に多発して
リエントリーが渦を巻いている状態で
それにより無秩序な興奮が起こり
心室が痙攣して
不規則にバラバラに収縮します



そのため効果的なポンプ機能を発揮できず
全身に送りだされる血液量が急激に減少し
数秒で意識消失などが急に起こり
この状態が持続すると
呼吸停止 ショック状態となり死亡します

1分持続するごとに
生存率が7~10%減少し



10分経過すると ほぼ生還できません


@治療と予防

発作時には
速やかに電気的な除細動を行います

AED・自動体外式除細動器は
患者さんの胸に当てると
心室細動 心室頻拍を自動的に診断し
ただちに電気ショックを与えて
心室細動を停止させ(除細動)
心臓の働きをもとに戻して救命します




時間との勝負で
発作後 3~4分以内に行うのが望ましい

最近はAEDを
街の中で見かけることも多いと思います




また 予防には
ICD・植え込み型除細動器が
用いられます

心室頻拍をよく起こす人
心室細動を起こしたことがある人は
体内にICDを埋め込んで
突然死を予防するのです



ICDは
治療が必要な頻拍を察知すると
自動的に適切な電気刺激を送りだします

電気ショック後に心拍が止まった場合は
ペースメーカーで回復させてくれます

なお ICDをつけている人は
自動車運転は原則禁止です


<遺伝的に危険な不整脈>



@QT延長症候群

心室の電気的興奮からの回復が遅くなり
収縮時間が延長される病態です



トルサードポアンと呼ばれる
独特の多型性の心室頻拍が現れ
心室細動に移行することもあります



突撃 脈が乱れて失神して
発作がおさまらないと 
突然死するリスクがあります


発症のきっかけは 遺伝子型で異なります

先天性のQT延長症候群では
病態形成に 
心筋細胞のイオンチャンネルの遺伝子異常が
関わっています

カリウムチャンネルが障害を受けて
心筋内からカリウムが
細胞外に排出されなくなると
収縮がおさまらなくなります




後天性のものは 
抗不整脈薬の副作用でも生じます

なお 健診などで見られることがある
心電図上の単なるQT延長は
心室が収縮後に回復するのに
時間がかかるということで
心室細動を合併するリスクはありますが
めまい 失神などの症状がなければ
心配ありません


@ブルガタ症候群

普段から心電図で特徴的な形が見られ
日本人では健診で見つかる異常の
約1%をしめます



睡眠中 安静時に
心室細動を起こすことが多く
そのほとんどが40歳代の男性です

ナトリウムチャンネルの遺伝子に
異常があると考えられ
アジア人に多いとされます




但し 遺伝子異常がはっきりしているのは
ごく一部だけです

心室細動を実際に起こすのは
ブルガタ心電図波形を示す人のごく一部に過ぎず
ほとんどは危険がないのですが

失神を起こしたことがあったり
血縁者に突然死した人がいたら要注意です

心室細動の既往があれば 
予防のためにICDを埋め込みます

既往がないブルガタの人にICDを埋め込むかは
議論が分かれています


@カテコラミン誘発多型性心室頻拍

運動により起こる心室頻拍で
安静時心電図では異常は認められません

診断に運動負荷心電図が必要になります
高橋医院