頻脈性不整脈について説明します


<頻脈性不整脈が起こる原因>

異常自動能 リエントリー という
ふたつの病的な現象により発症します

@異常自動能

洞結節などの生理的なリズムを作る部位以外の
心臓の場所から
拍動を起こす電気刺激が発生する病的な状態で

こうしたことが起こると
通常より早いタイミングで拍動が起こったり
リエントリーが生じるきっかけになります

@リエントリー

通常 心筋は 
収縮が終わると電気的興奮が消失して
次の収縮に備えて拡張しますが

収縮後に電気的興奮が消失せず
心臓の中で回り続ける状態を 
リエントリーと言います

リエントリーが生じると
心臓は異常なリズムでの収縮を繰り返し
空打ちになり 
正常なポンプ機能を果たせなくなります




<発作性上室性頻拍症>

正常の伝導路以外に
心房と心室の間に
余分な副伝導路が存在するため

正常伝導路と副伝導路の間で
電気の流れのリエントリーが生じて 
頻脈が発生する病態です

心室に侵入した電流の一部が
副伝導路を逆行して心房に戻り
それが繰り返されて 
リエントリーが形成されてしまいます




副伝導路は
ケント束 ジェームス束 マーハイム束 
などと呼ばれますが
副伝導路の存在部位は人により異なり
複数有している人もいます

生まれつきの病気ですが
一定の年齢にならないと
頻脈発作は起こらないことが多く
副伝導路が何歳頃から機能し始めるかも 
人によってまちまちです

3~4割の人は 
副伝導路が一生機能せず
ずっと発作が起こりません

副伝導路の存在部位は
心臓電気生理学的検査により
同定することができます

ペーシングカテーテルという
先端に電気刺激を発生する電極のついた
カテーテルを用いて
心臓内のさまざまな部位の心電図を記録し
それらをコンピュータ処理して
心内膜マッピングを行い
心臓内の詳細な心電図地図を作り同定します


@症状

突然起こり
1日中続くこともあり
続いている間は動機などの症状がきついですが
突然停止して治ってしまいます

発作時には
心拍数が150~200回くらいになるので
動悸の症状が強いですが
心房細動のように脈がばらつくことはなく
心房と心室の興奮も
1対1で規則正しく保たれるので
心室のポンプ機能は低下せず
心房の収縮も保たれているので血栓もできません

したがって
致死的な怖い不整脈ではありません

発作が起こったときには
迷走神経刺激法で停止させます

10秒ほど息をこらえる・バルサルバ法
冷たい水に顔をつける 冷たい水を飲む
頸動脈洞圧迫 マッサージ法
といった方法が よく用いられます


@治療

動悸症状のない場合は 治療は必要ありません

脈拍数が150以上で
突然始まり 突然止まる動悸
あるいは
まったく不規則に脈の打つ動悸があり
それがいったん生じると長く続く場合 
または頻繁に起こる場合は
治療の対象となります

房室結節に作用して
レートコントロールする抗不整脈薬を使います

発作時の症状が強く 
日常生活に支障が出るようであれば
心臓に入れた細いカテーテルの先から高周波を流して
副伝導路を焼き切る根治的治療の
カテーテルアブレーションを行います




<WPW症候群>

電気的興奮が
正規の房室伝導系と
副伝導路の間をグルグルまわる
房室リエントリー性の発作性上室性頻拍です



心房細動が合併して
心房の速い電気刺激が
副伝導路を通って心室に伝わる場合は
リスクが大きくなります

副伝導路には
房室結節のように
伝導を遅延させる安全装置機能がないので
心房の速い刺激が心室に
直に伝わってしまうのです

@治療

心房細動発作がある場合
失神などの重篤な症状がある場合
発作によりQOLが損なわれる場合
発作に対する薬物治療が無効な場合
などでは
カテーテルアブレーションで治療します



成功率は95%で
術後24時間以内に再発がなければ
再発率もゼロです


<心房粗動>

それほど多く見られる不整脈ではなく
多くは一過性に生じるもので 
慢性化することはめったにありません

心房の中で
一定の回路を通って
規則的な電気の旋回が起こっている状態で
右心房の三尖弁周囲で生じるリエントリーが
引き金になることが多いです

高血圧 心臓病がある人に多くみられます

1分間に300回ほど 規則的に心房が収縮し
動悸 息切れなどの症状があり
ひどいときは失神します

房室結節が安全装置として働くので
心室には心房の過剰な興奮は伝わらないので
怖い不整脈ではありません


カテーテルアブレーション治療が
非常に有効です

心房粗動の多くは
電気のリエントリーが
三尖弁の周囲のみで起こるため
その回路の一部を焼き切ることで 
発作を起こさなくすることができます

但し 心房粗動がなくなっても 
今度は心房細動が起こってくることがあります


<心房細動>

心房が不規則に細かく動く病態です

既に詳しく説明しましたので 
そちらをご参照ください
高橋医院