哲学の歴史を眺め
その議論を理解しようとするときに欠かせないのが
「合理主義と経験主義」という物差しです


<合理主義と経験主義>

@合理主義・理性主義

人が生得的に生まれ持った知性的な能力により
知識が理解できる

とする考え方で
プラトンやライプニッツが発展させました

合理主義と理性主義の違いについて説明する図
合理主義と理性主義の違いについて説明する図・その2
@経験主義

人が物事を知るのは
経験を通して知識が生み出されるから

とする考え方で
アリストテレスやロックが発展させました


「合理主義と経験主義」という物差しを用いて
古代から近代にいたるまでの哲学の流れを
理解することができます


<古代哲学>

ギリシャ哲学は
プラトンの合理主義 と アリストテレスの経験主義 
の対立と解釈できます

@プラトンのイデア論

プラトンが提唱した「イデア」は 普遍的な概念です

人はイデアを有しているので
それによって個別の対象を認識できる

イデアは先天的に有しているもので
経験により得るものではない

知識は
生まれながらに持っているものだが
生まれた時に全て忘却してしまうので
それを思い出すことが 学ぶことである

プラトンは そう語りました

プラトンのイデア論について説明する図

イデアは
全てのモノを包括する 天上界のようなイメージで
モノの原型のような形です

これが 合理主義 理性主義的な考え方の根幹となります


@アリストテレスの経験論

一方 アリストテレスは

個々のモノから超越した存在の
普遍的なイデアを認めませんでした

彼は
現実的なもの 経験的なものから
出発しようとする立場をとり
具体的に 経験的なものを積み重ねながら
学問を作っていこうとしました

心は 何も書かれていない白板で
経験により 
さまざまなことが書き込まれていく

形は 
形相(エイドス) と 質料(ヒュレー) からなる

質料が形相を規定することで 個々のものが成立する

アリストテレスのこうした考え方は
後世のあらゆる学問に多大な影響を及ぼしました

アリストテレスの経験論について説明する図


アリストテレスは
三段論法を作った論理学の父でもあり

カテゴリーという言葉を作り
領域を分け その領域全体をひとまとめにして
共通にあるものを探り 考えました

彼の哲学は
形而上学 メタフィジカと呼ばれ
自然的 経験的世界の 
形があるものを超えるようなもの
を捉えようと試みました

存在論のもととなる
「存在とは何か」という問いかけを投げかけ
人の思考過程 
考え方の基本を作り上げたとされています


<中世哲学>

前回ご紹介した 解釈や評価が分かれる中世哲学ですが
その屋台骨を作ったのが
アウグスティヌスとトマス・アクイナスで
それぞれが プラトン アリストテレスの系譜を引いています

@アウグスティヌス

中世の始まりに活躍した彼の考え方は
プラトンの合理主義を受け継いだ
新プラトン主義と呼ばれます

「神の国 地上の国」の 二世界説を唱えて

神の国を 
プラトンのイデアの世界のように解釈して描きました

アウグスティヌスの肖像画


@トマス・アクイナス

一方 中世がピークを迎えた頃に活躍した
トマス・アクイナスは
中世のスコラ哲学を体系化しました

この時代のヨーロッパに
アラビア世界からアリストテレス哲学が逆輸入され
ヨーロッパ世界は
アリストテレスの存在を知ることとなりましたが

トマス・アクイナスは
アリストテレスの経験論を用いて 聖書の教えを理論化しました

トマス・アクイナスの肖像画
高橋医院