20世紀末の哲学は 暗黒期と評価されていました

バイオサイエンスやデジタルテクノロジーの発展により
社会を支える価値観が大きく変化しているのに

哲学は
そうした問題の解決になんの貢献もしていない
なんの役にも立たない と言われました

なぜ 貢献できなかったのでしょう?


<現代哲学の幹をなす相対主義>

ポストモダンや現代哲学では
相対主義の強い展開がありました

文化人類学の影響が強く
ヨーロッパを中心とした
文化普遍主義的な発想に対する批判や
大戦後の植民地主義に対する批判が起こったのです

その根幹を成したのが 以下のような考え方です

@文化相対主義

文化というものは
それぞれの背景を理解し 
独立した形で理解する必要があり
どの文化が優れていると言うことはできない

全ての文化に共通する
絶対的な基準になるものはなく
文化に優劣をつけることはできない

文化相対主義について説明する図


@言語相対主義

ローカルな形で異なる言語が
ものを見るときの理解の仕方を形作る

言語というものの理解なしに
文化や価値観について語ることはできない

20世紀の哲学では
言語に注目する言語論的転回が起こりましたが
言語はサングラスのようなものなので
相対主義的な考え方に拍車がかかりました

言語相対主義について説明する図

@パラダイム論

概念の枠が違えば 
ものの理解の仕方が異なるのだから
パラダイムを理解し 
それに応じてものを理解したり 
理論を形成する必要がある

パラダイム論について説明する図


このように
文化 言語 概念など「枠組み」の違いを認識して
相対的に物事を見なければならない

全てのものに共通した考え方や価値観はなく
それぞれの地域や枠組みに応じて
正しいものは変わっていく

正しいものは変わっていくことを説明する図

という考え方が 20世紀末の哲学を支配しました


<相対主義の限界>

しかし そうした相対主義では
「何が正しいのか?」という問いに対する基準が
出てこなくなってしまいます

相対主義の限界について説明する図
そして20世紀末には
それぞれの人が自分の考え方を好き勝手に言い放ち
人と違うことを言った方が良い
という状況に陥ったのです

正しいことを決めることができなくなる

正しいことを決めることができなくなることを説明する図

それでは確かに
現代社会が抱える諸問題の解決には 貢献できません


<相対主義を超える新しい哲学をどう展開していくか?>

最近は
言語でなく もっと物質的なものに着目しようという動きが生まれ
言語というものに含まれる物質性が注目されています

ポスト言語論的転回 です

ポスト言語論的転回について説明する図

@メディア技術論的転回

メディアは 言語の伝達に関わる媒体で
見せ方や伝達の仕方は 理解や認識を変化させる

したがって
どのようなメディアを通して物を理解するかが重要で
音 紙 電子メディアなど メディアの種類により
理解や認識が異なるか検討されています


@自然主義的転回

脳の物質的状態を解明して
心 意識について理解する試みです

抽象的で目に見えない“心の在り方”を
目に見える形で物質的に検証しようと試みます


<実在論的転回 新実在論>

相対主義批判の いちばん原則的な考え方で

相対主義の中で どうやって正しさを決定していくかを
明らかにしようとします


カントは 実在論を語るとき

言語 文化の介在によって
実在の在り方が ある程度 変形されているから

何らかの対象を認識しようとするとき
こちらが持っている概念 カテゴリーを通して理解しよう
と試みました


しかし このようなカントの発想では
相対主義に陥ってしまいます

そこで
対象そのものを 
カテゴリーを使わなくても理解できるのではないか
という発想が生まれてきます

カテゴリー 概念 言語ではなく
物質的なもの
技術的なもの
具体的で検証可能なもの
に基づいて
心の在り方 意識の在り方 認識の仕方を
説明しようとする試みです

こうした流れは「新実在論」と呼ばれ
現代哲学のカッティング・エッジとなっています

どうやって カントの批判を受け入れない形で
実在論的なものを導入するかが
現在の哲学の大きな課題となっているそうで

これまでにたびたび紹介したマルクス・ガブリエルらが
頑張って論を展開しています

マルクス・ガブリエルが書いた新実在論

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