睡眠時無呼吸症候群の原因 肥満との関連
について説明します

<原因>

ベースとなるのは上気道の狭窄 閉塞
それにはさまざまな要因が関与します

@解剖学的異常

肥満
口蓋扁桃肥大 小顎 下顎後退 鼻中隔彎曲
などの関与が大きく

アジア人は下顎が小さく後退気味なので
痩せていても上気道の狭窄 閉塞が起きやすいとされます

また 就寝時の仰臥位 開口 頭部前屈
も原因になります

睡眠時無呼吸症候群の解剖学的異常について説明した図


@甲状腺機能低下

患者さんの40~50%に
睡眠時無呼吸症候群を認め
咽頭粘膜の浮腫によると推察されます

甲状腺機能低下症でみられる
いびき 日中の傾眠 全身倦怠 記憶力低下などの症状
睡眠時無呼吸症候群によるものかもしれません


@先端肥大症

50~80%に認め
咽頭周囲粘膜 舌の肥大によるとされます


@鼻閉

慢性副鼻腔炎 鼻茸 鼻中隔湾曲症 アレルギー性鼻炎
などで 睡眠時無呼吸症候群を認めます

鼻閉により口呼吸をするようになることで
無呼吸になりやすくなります


@アルコール 喫煙

増悪因子になります


@仰臥位での就寝

閉塞型睡眠時無呼吸症候群の50~60%で見られ
仰臥位で寝るとAHIが2倍以上増えます

特に 若年例 軽症例 非肥満例で多い

側臥位にすると改善することが多いので
パジャマの背中にポケットを付けテニスボールを入れて
仰臥位にならないようにしたり
枕を5cmほど高くして側臥位で寝やすくする
といった試みがなされています

側臥位での就寝の有効性を説明する図

こうした対策は 
CPAP治療が上手くいかない場合も勧められます


<肥満は最大の原因>

@肥満は閉塞型睡眠時無呼吸症候群の最大の原因

睡眠時無呼吸症候群の70~80%で肥満を認め
中等度~重症例の58%は肥満が原因です

肥満だと発症リスクは3倍以上になり
未治療の患者さんでは 体重増加がより顕著です

肥満は閉塞型睡眠時無呼吸症候群の最大の原因であることを説明する図

肥満で睡眠時無呼吸症候群がない人はわずか10%程度
との報告もあります
@BMIとAHIの関連

体重増加で症状が急激に悪化し
BMI23以上だと有意にAHIが増加します

10%の体重増加でAHIが32%増加し
中等症のリスクが6倍増加するとされますが

逆に10%の体重減少でAHIが26%減少します

体重 AHIの変化の相関を示すグラフ


@肥満により気道が狭くなり 肺容量が低下する

脂肪沈着で狭くなった喉を
空気が通過しようとして抵抗が生じいびきが発生し
この部位が完全につぶれてしまい閉塞すると無呼吸になります

また 肥満により
胸壁周囲の内臓脂肪沈着による胸郭運動の制限
横隔膜挙上が起こり
それらにより呼気予備量が低下し
拘束性障害がみられ肺容量が低下します


@内臓脂肪が多いと睡眠時無呼吸症候群になりやすい

男性の肥満は女性の肥満より
10倍以上に睡眠時無呼吸症候群なりやすく
男性は内臓脂肪型肥満が多いから
と推察されています

また BMIより腹囲の方が
睡眠時無呼吸症候群の指標と相関することから
内臓脂肪型肥満の人は
睡眠時無呼吸症候群のスクリーニング検査をお勧めします

内臓脂肪が多いと睡眠時無呼吸症候群になりやすいことを示す図
内臓脂肪が多いと睡眠時無呼吸の関連を示す図

@睡眠時無呼吸症候群は肥満を誘導する

肥満が睡眠時無呼吸症候群の原因となるばかりでなく

睡眠時無呼吸症候群があることで
身体活動性が減り
インスリン抵抗性 基礎代謝低下が起こり
さらに肥満になり病態が悪化します

睡眠時無呼吸症候群は肥満を誘導することを示す図


@減量の効果

減量は睡眠時無呼吸症候群の有効な治療となります

減量単独では 著明なAHI改善は得られませんが
軽症化は期待できますし
睡眠時無呼吸症候群の原因となる生活習慣病は改善します

10%の減量でAHIが26%減少するとの報告もあり


減量は睡眠時無呼吸症候群の有効な治療となることを示すグラフ
CPAP治療との併用がより効果的減量でCPAP治療から離脱できたという報告もあります

減量とCPAP治療との併用がより効果的であることを示すグラフ

日中の眠気が強い患者さんは
栄養指導 減量指導が奏効しないことが多いことから
CPAPで眠気の改善を行ってから減量すると良いとされます

また 運動療法を併用すると
減量がなくてもAHIが改善するとの報告もあり
無酸素運動により呼吸筋が鍛えられ
肺気量が増加するためと推測されています


@肥満低換気症候群(Pickwick症候群)

肥満低換気症候群(Pickwick症候群)について説明した図

著明な肥満を伴った閉塞型睡眠時無呼吸症候群の
最重症型です

*診断基準
・高度肥満 BMI≧30
・日中の高度傾眠
・慢性の高CO2血症(PaCO2>45mmHg)
・重症以上の睡眠時無呼吸症候群

*症状 検査所見
・チアノーゼ
・右心不全の合併による頸静脈の怒張や下腿浮腫など
・肺胞低換気 (低酸素 高CO2)
・多血症
・心電図での右室肥大

心不全 狭心症 肺性心などの循環器系疾患の有病率が
閉塞型睡眠時無呼吸症候群のない肥満患者と比べて
9倍も高いことが明らかにされています

減量およびCPAPで治療します
高橋医院