睡眠時無呼吸症候群と生活習慣病との関連
睡眠時無呼吸症候群と生活習慣病は 深く関連しています <睡眠時無呼吸症候群の生活習慣病への悪影響> 睡眠時無呼吸症候群を放置すると 肥満 糖尿病 脂質異常症などが合併 悪化します @食欲の増進 睡眠時無呼吸症候群では *食欲抑制に関与するレプチンの抵抗性の上昇 *食欲亢進に関与するグレリンの増加 が認められ 食欲制御が困難になり肥満になりやすいと考えられます @低酸素血症による悪影響 睡眠時無呼吸症候群にともなう低酸素血症の影響で *酸化ストレス 炎症が亢進して *インスリン抵抗性 レプチン抵抗性が誘導され 夜間のアデイポネクチンの低下も見られます なお CPAP治療により レプチン抵抗性 アデイポネクチンの低下は改善します @相互に悪影響を及ぼし合う 睡眠時無呼吸症候群と生活習慣病は 共通した病態を有しているので 合併すると両方の病態が全身炎症をさらに誘導し 悪性スパイラルを形成してしまい 心血管疾患のリスクをさらに高めます ですから *生活習慣病の患者さんは 睡眠時無呼吸症候群を *睡眠時無呼吸症候群の患者さんは 生活習慣病を それぞれ疑うことが大切です @双方の病態形成に関与する因子 *肥満 *低酸素血症 *酸化ストレス増強 *全身炎症反応増強 *交感神経亢進 カテコラミン分泌増加 *レプチン増加 アデイポネクチン低下 *遊離脂肪酸増加 *視床下部-下垂体-副腎皮質系の活性化 などが関与すると推察されています <メタボリック症候群と睡眠時無呼吸症候群> @睡眠時無呼吸症候群からメタボリック症候群 睡眠時無呼吸症候群の50~80%には メタボリック症候群の合併があり AHI30以上の重症例での合併頻度は特に高いとされます @メタボリック症候群から睡眠時無呼吸症候群 一方 メタボリック症候群の60%には AHI15以上の睡眠時無呼吸症候群が合併します 肥満 高血圧 高血糖 脂質異常症の合併が多く 合併する疾患が多いほどAHIが上昇します <糖尿病と睡眠時無呼吸症候群> @睡眠時無呼吸症候群は 糖尿病の独立したリスク因子 中等度の睡眠時無呼吸症候群は 年齢 性別 BMI 肥満などとは関係しない 独立した糖尿病のリスク因子です たとえ肥満がなくても 睡眠時無呼吸症候群の40%はやがて糖尿病になり 発症リスクは2~3倍です 閉経前女性では 中等度以上の睡眠時無呼吸症候群があると 糖尿病の発症リスクが28倍増えるので 特に注意が必要です 睡眠時無呼吸症候群が重症化すると 糖尿病の合併率が上がり 既に合併していた糖尿病は悪化し 糖尿病の合併症も進展します また AHIが上がるとインスリン抵抗性が上昇します @糖尿病患者では睡眠時無呼吸症候群の有病率が高い 一方 糖尿病患者では 中等度以上の睡眠時無呼吸症候群の有病率が高く 20%以上と報告されています @睡眠時無呼吸症候群が糖尿病を起こす機序 睡眠時無呼吸症候群にともなう 間欠的低酸素状態 不眠などにより *交感神経系の過緊張・カテコラミン分泌過剰 *活性酸素の産生 *炎症性サイトカイン増加 *アディポカイン分泌の変化 などが生じて インスリン抵抗性が惹起されます また 視床下部-下垂体-副腎系の調節障害による コルチゾール分泌増加 成長ホルモン減少により糖代謝が乱れます @CPAP治療 CPAP治療により *インスリン抵抗性改善 *夜間のアデイポネクチンの低下軽減 などが見られ A1cが改善するとの報告が多いですが 改善しないという報告もあります 睡眠時無呼吸症候群は REM睡眠時の筋活動が低下により悪化するので 明け方のREM中にCPAPがきちんとできているかも 糖尿病の改善の重要なポイントになります <脂質異常症 動脈硬化と睡眠時無呼吸症候群> 睡眠時無呼吸症候群では 脂質異常症を高率に合併します AHIは TG増加 HDL-C低下の独立した関連因子で 動脈硬化指数と正の相関を示します 一方 CPAP治療による LDL-C TG減少 HDL-C増加が報告されています *交感神経活動亢進 *酸化ストレス *炎症性サイトカイン アデイポカインの増加 などの関与が示唆され 間欠的な低酸素暴露が HIF-1 SREBPなどの転写因子の活性化を介して 肝臓での脂質代謝に影響を及ぼすことも推察されています <NASH・脂肪性肝炎> AHIは独立した肝機能検査値の上昇因子で 睡眠時無呼吸症候群の重症度は NASHの組織学的炎症の程度と相関します 慢性的な低酸素で誘導される 全身性炎症が関与すると推察されています
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