周期性四肢運動障害
もうひとつの睡眠関連運動障害の 周期性四肢運動障害(PLMD) について説明します <どんな病気?> 夜間睡眠中に 周期的に何度も足や手がぴくついて 目が覚めて深く眠れない病気です 高齢者に多く 不眠は訴えるのですが その原因である不随意運動を 自覚していないことも多いです 睡眠中に 足首から先が0.5~5秒ほどピクッと動き それが20~40秒の間隔で何度も繰り返し そのたびに目が覚めるので不眠になり 昼間に眠くなります 一晩ポリソムノグラフを行い診断します <症状の特徴> @症状が出やすいとき 休んでいるとき じっとしているときに悪化し 電車 飛行機などで座っているとき 映画館 美容院などでも起こります @症状が悪化するとき 安静時間が長いほど 動きの制限が強いほど 症状は増悪します また 夕方から夜にかけて悪化し コーヒーやアルコールで症状が出やすくなります @発作の頻度 発作が起きる回数は 1ヶ月に数回~毎日とさまざまで 症状が昼間まで出ることもあります 患者さんの1/3は週に2回以上 中等~重度の発作が起こります <睡眠障害> この病気の70%の人が 寝付けなくて入眠までに30分以上かかり 60%の人が 夜中に3回以上 中途覚醒して熟眠感の欠如を訴えます 患者さんは 不眠のために異常感覚が生じていると考えるために まず眠らせてほしいと訴える場合が多いです 睡眠障害は 昼間の生活にも影響し 患者さんの85%が 昼間の生活への悪影響を自覚しています 日中の眠気 集中力低下 認知機能低下が起こり QOLが低下します また うつ 不安などの気分障害の発症のリスクになり 夜間高血圧 心血管イベントリスクの増加とも関連します <特発性と二次性> @特発性 他の不随意運動を起こす神経疾患の研究から ドパミン系の機能低下が 原因として想定されています @二次性 *透析導入の末期腎不全 *妊娠(5人に1人の高率) ・3人以上の多産婦は男性の3倍以上の有病率がある ・喫煙 飲酒する妊婦は10.2% しない妊婦は4.5% *関節リウマチ *末梢神経障害 脊髄障害 *パーキンソン病 *鉄欠乏性貧血 *抗うつ薬使用者 などが原因で起こります <病態> @ドパミン神経系の機能異常 不随意運動の症状の出現には ドパミン機能の抑制が関与すると推測されます 夜間はメラトニン分泌により ドパミン機能が抑制されるので 症状は夜に悪化すると考えられます @鉄の異常 脳脊髄液内のフェリチンが低値を示し 細胞レベルでも鉄の利用能 輸送の異常もありますが 鉄欠乏性貧血はともないません <治療> @最初に睡眠指導が行われます *カフェイン ニコチン アルコールを避け 特に夕方以降は摂取しない *抗うつ薬 抗ヒスタミン薬 抗精神病薬 リチウム などを避ける *就寝時に 湿布(温・冷) カイロを使う @生活指導 *激しい運動は避け ウォーキングなど適度な運動をする *寝る前にマッサージ ストレッチを行う *暑いときは冷たいシャワー 寒いときは熱いシャワーで 症状が和らぐことがある *何かに集中していると気にならない @薬物治療 症状とそれにともなう不眠などの睡眠障害を改善し 日中の活動能力の向上を目的に行います *軽症~中等症例 第1 選択薬はクロナゼパム 第2 選択薬はドパミンアゴニスト *中等~重症例 ドパミンアゴニストが第1 選択で 効果が不十分なときは 増量またはクロナゼパムを併用します @ドパミンアゴニスト ドパミンアゴニストのプラミペキソール(ビ・シフロール)が 2010年から保険適応されました 80%に効果があり 症状が発現する2~3時間前 就寝前に服用します またロチゴチン(ニュープロパッチ)は 貼り薬のドパミンアゴニストで 1日1回貼るだけで24時間効果が持続するので 昼間に症状があるときに使われます @ベンゾジアゼピン系薬物 ドパミンアゴニストだけでは 入眠導入効果が乏しいときに併用されますが 重症例では効果がなく 症状を悪化させることもあります @抗けいれん薬 重症例 痛みが強い例では 抗けいれん薬のガバベンチンエナカルビルが使用されます
高橋医院