睡眠時無呼吸症候群
睡眠時に呼吸回数が低下して
睡眠の質が悪くなりますが

睡眠時に 身体の運動や行動異常が生じ
そのために睡眠の質が悪くなる病気があり
「睡眠関連運動障害」
と呼ばれます

睡眠関連運動障害について説明した図

あまり聞いたことがない病気だと思いますし
日常の診療でこうした患者さんに接することは
決して多くありません

このように
一般社会や医療界においてさえ
認知度・理解度が低いため
この病気に罹患されている患者さんの悩みは大きい

書き手も 自らの勉強不足のために
受診された患者さんに
辛い思いをさせてしまったことがあります

睡眠時無呼吸症候群について解説したのを機会に
この病気についてご紹介しようと思います


<睡眠関連運動障害とは?>

睡眠中に身体の運動や行動異常が生じ
そのために良質な睡眠が得られず
日中に眠気が生じる病気です

*むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)

*周期性四肢運動障害(PLMD)

が代表的な病気です

むずむず脚症候群 周期性四肢運動障害について説明した図


<むずむず脚症候群 レストレスレッグス症候群>

むずむず脚症候群について説明した図

@診断

下記の4項目を全て満たすと 確定診断されます

*脚を動かしたくてたまらない衝動感と不快感がある
*休んでいたり じっとしているときに悪化する
*脚の運動により軽減ないし消失する
*夕方から夜に出現ないし悪化する

むずむず脚症候群の診断基準

不快感で脚を動かしたくなることがポイントです

@症状

*入眠前にじっとしているときに
 下肢の異常感覚を感じ 眠れない

*脚がムズムズする ピリピリする ビクつく
 などの不快な症状がある

*虫がはっているよう ほてる 電流が流れる 痛い

*脚の表面でなく内部が変な感じがする

*下肢を動かしたくなる衝動にかられる

むずむず脚症候群の症状についてまとめた表

むずむず脚症候群の症状の特徴についてまとめた表

脚の運動 伸ばしたりすることで改善し
脚を叩いたり足踏みしても改善します

上肢に症状が出ることもあります

夕方から夜にかけて症状が出ることが多く
後述する周期性四肢運動が80~90%と高率に生じ
睡眠中に周期的に四肢にミオクローヌス様の運動が起こり
そのせいで眠れなくなります

@有病率

欧米人の有病率は5~10%で
アジア人では少なく 2~5%前後です

女性は男性の1.5~2倍の有病率があり
加齢とともに有病率は増加し
5%以上になります

むずむず脚症候群の男女の年齢別の有病率を示したグラフ

日本では1~4%の有病率
患者さんの数は200~500万人です

不眠症患者の10人に1人
むずむず脚症候群とされています

患者さんの約60%に家族性発症があります

家族性発症について説明した図


@原因による分類

*一次性・特発性

はっきりとした原因がわからないもの

*二次性

さまざまな病気や薬剤が原因で起こるもの

原因による分類


@発症年齢による分類

*早期発症型

45歳前に発症し
家族性発症が多く
常染色体優性遺伝を示します

症状は軽く 進行は比較的遅く 
治療反応性は良好です

*後期発症型

45歳以降に発症し
家族性はなく
病因にフェリチンが関連するとされます

急速に進行し治療反応性が悪いこともあり
重症例では心血管疾患の有病率が高いです

発症年齢による分類


@原因として推定されていること

*遺伝的要因
*鉄分の不足
*ドパミンの機能障害
*他の病気 薬剤の影響

などが 原因の候補として推定されています

原因として推定されていることをまとめた表

なかでも
不随意運動をきたす他の神経疾患の研究から
ドパミンの働きの低下が病態に関わるとの推測があります

ドパミンの働きの低下と病態について説明した図


@治療

症状の予防のためには
禁煙 アルコールを控えるといった生活習慣の改善が
まず推奨されます

実際に症状が現れたら
足のマッサージやストレッチ
患部を冷やす 温める
といった処置を行います

生活習慣の改善について説明した図

薬物治療としては

*鉄剤
*ドパミン受容体作動薬

などが使用されます

薬物治療について説明した図


高橋医院