睡眠時無呼吸症候群の治療の基本は 生活習慣の改善です

<生活習慣の改善>

@横向きで寝る

最も簡便な対策は 横向きで寝ることです

しかし
気道閉塞の強い患者さんでは効果がないこともあり
横向きでは寝られないという患者さんも少なくありません

また 寝てしまえば どのように寝るかは
自分ではコントロールできないのも難点です

横向きで寝ることの有効性を強調するポスター


@減量

特に男性の肥満患者では 必ず励行すべき治療で
食事療法と運動療法を併用します

10~20Kgの減量で
無呼吸回数の低下を認め
インスリン抵抗性 脂質代謝の改善も見られます

減量の有効性を強調するポスター

しかし 減量だけで完全に治すことは困難なので
CPAP治療を併用しながら減量を進めます


@晩酌 入眠前の飲酒の中止

お酒を飲んで入眠すると
気道粘膜の浮腫が生じ いびきをかきやすくなります
また舌などの筋肉が弛緩するので
余計にいびきをかきやすくなります

また 寝酒は寝つきには良いですが
中途覚醒が増えトータルでは睡眠の質が低下します

晩酌してそのまま寝る人
入眠前に必ず飲酒するという人は
飲酒の中止のみで症状が改善することもあります

晩酌の禁止を訴えるポスター


@禁煙

咽頭喉頭部に炎症を起こさせ気道を狭くするので
いびきが2~3倍増え
中等度の睡眠時無呼吸症候群の発症リスクが
4.4倍に増えるとされています

禁煙を訴えるポスター

@睡眠薬 精神安定剤をやめる

ベンゾジアゼピン系の筋弛緩作用により
余計に喉の筋肉が緩んで症状が悪化します

睡眠時無呼吸症候群と気付かず
不眠のために睡眠薬を服用していると要注意です


<本格的な治療>

*AHIが5~20では 口腔内装置

*AHIが20以上だと CPAP

が選択されます

治療戦略の基本を解説する図"

上気道の解剖学的狭窄があれば外科手術を考え
鼻閉があればその治療も重要です


<マウスピース 口腔内装置>

睡眠中に喉がふさがらないようにするため
就寝中に口に装具をはめる治療で

装具をはめることで
睡眠中に下顎が前に出て舌が持ち上がります

マウスピース 口腔内装置

利用者は増えています

装具は歯科 口腔外科でオーダーで作製し
比較的簡便で効果も早く出ますが
顎関節に少し負担がかかります

小型なので持ち運びができ 長期間継続できるのが利点です

適応となるのは
軽症~中等症の患者さん
CPAPのアドヒランスが悪い患者さんです

中等症の患者さんでは
AHIの改善度はCPAPに劣るものの
降圧効果 QOLの改善は同程度で 心血管死を減少させます


<CPAP 経鼻式持続的陽圧呼吸法>

就寝中に鼻にマスクをあて
そこから空気を送りだして 喉がふさがらないようにする治療です

CPAPの器具
CPAPの原理を説明する図

最も有効な治療方法
慣れれば熟眠が得られるようになり
日中の眠気の軽減にも効果があります

CPAPの効果をまとめた図

自宅に機器を設置し 通院は月1回で
使用者は50万人を超えています

重症例には積極的に使用し
AHIが20以上だと保険適応になります

1日に4時間以上 週5日の使用で 治療効果が期待できます


@機器がうまく使えるかどうか

問題になるのは 機器への慣れで
機器がうまく使えない人が3割ほどいて
ダメな人は最初の1ヶ月以内に断念してしまいます

患者さんの理解度 意欲
頑張って治したいと思うほどの自覚症状があるか
マスクなどの装着感
などが機器使用の継続に影響します


@効果

根本的な根治効果はありませんが
使用翌日から
日中の症状の改善が得られることもあります

中長期的には

*死亡率の低下
*心血管疾患の予防効果
*高血圧の改善

などが報告されています

CPAPの延命効果をまとめた図

しかし 脳梗塞 糖尿病の予防効果は不明です


@効果発現のメカニズム

睡眠時の低酸素状態の改善により
*交感神経活動亢進の抑制
*TNF IL-6などの炎症性サイトカイン
*レプチンの低下
*血管内皮細胞機能の改善
*内臓脂肪蓄積の減少
などが起こることが原因と考えられています

CPAP治療後には
体重が増加することがあるので要注意です

この現象には
睡眠時無呼吸症候群の改善による
基礎代謝量 睡眠時の消費エネルギー量の減少
症状の改善による食欲増加
などが関与すると考えられます


<モダフィニル内服>

CPAPで眠気が解消しないときに使われます

睡眠時無呼吸症候群では
脳脊髄液中のヒスタミンが少ないとされ

それに対する対策として
モダフィニルが視床下部に取り込まれることで
効果が期待されると考えられています

モダフィニルの錠剤


<手術>

狭窄する喉の粘膜を切り取ってしまう手術です

効果があるのはごく一部の症例で
直ちに行うものではなく
エビデンスは乏しいとされます

扁桃腺肥大が原因の場合は
扁桃腺摘出を行うことで
劇的に症状が改善する場合があります
高橋医院