最後に 線維化の診断と治療 について説明します

<線維化の診断とステージング>

@組織生検

診断 ステージングには
組織学的診断がゴールドスタンダードになるので
組織生検が必要になります

しかし
生検は簡単に行えるものではないので
さまざまな組織学的診断以外の方法が考案されています

@画像診断

代表的なものが画像診断で
エコー CT MRIにより 線維化の状態を評価します

また臓器の固さの評価には
エコーを用いたエラストログラフィーが用いられ
肝臓 腎臓で使用されています

エラストログラフィー装置

エラストログラフィーで線維化の程度を評価した所見像

@機能評価

臓器の機能により線維化を評価する試みもなされ
肺 心臓で使われています

@血中バイオマーカー

臓器局所での線維化の程度を反映する
血中バイオマーカーも検討されています

*肝臓
血小板 ヒアルロン酸 P3P

*腎臓
TGF-β MCP-1 MMP-2 尿中P3P

*肺
IL-8 CCL18 MMP-1 MMP-7 IGBPs

*心臓
NT-proBNP

が それぞれバイオマーカーの候補となっています


<線維化は改善し得る>

慢性炎症によって起こり
臓器の機能を損なわせてしまう病的な線維化は
一方向性の反応で 改善しないと考えられてきましたが

かなり進行した線維化も改善し得ることが
近年 明らかにされつつあります

特に肝臓は他臓器に比べると
線維化が改善しやすいと報告されています


線維化改善のメカニズムには
以下のようなことが想定されています

@原因となる慢性炎症がなくなる

筋線維芽細胞の活性化が止まり
実質細胞の再生が始まります

@炎症の鎮静化

免疫細胞のプロファイルの変化
特にマクロファージのサブタイプの変化により
炎症は鎮静化されます

@筋線維芽細胞の不活化と排除

活性化されていた筋線維芽細胞が
アポトーシスを起こして不活化状態になると
線維化は抑制されます

@ECMの分解

*MMP
ECM分解酵素のMMPが活性化されると
コラーゲンなどのECMが分解されます

*マクロファージ
ECM分解産物を消化するとともに
ECMを分解するMMPの抑制分子の働きを抑制します

*上皮細胞
PGE2を産生し 線維芽細胞活性化を抑制します


<抗線維化薬>

現在 臨床の場で
治療に実用化されている抗線維化治療薬は
肺線維症で使用されている2種類の薬だけで

肝臓 腎臓 心臓の線維化を抑制する薬は
実用化されていません


<線維化関連分子を標的とした治療薬>

新たな抗線維化薬の開発が望まれますが
抗線維化薬の標的となる分子には
以下のようなものがあります

*PDGFR VEGFR FGF receptor
*TGF-β
*IL-13
*LPA
*CTGF
*インテグリン
*Galectin-3
*LOXL2
*transglutaminase 2
*NOX4
*JNK pathway
*PGE2
*HGF
*Nrf2
*PTX-2 pathways

@肺の抗線維化薬の標的分子

以下の分子が候補として挙げられています

肺の抗線維化薬の標的分子についてまとめた表

@肝の抗線維化薬の標的分子

線維化進行のステップごとに
以下の分子が候補として挙げられています




こうした線維化に関わるさまざまな因子の働きの阻害による
線維化抑制が試みられています

特に
*EMTの抑制因子
*TGF-βのシグナル修飾薬
などが期待されていますが
はっきりとした効果は未だ得られていません

線維化に関わる因子は多いだけに
どこかひとつのポイントを抑制するだけで良いのか?

どの分子を抑制すれば 大元で線維化反応を抑制できるか?

夢の抗線維化薬の開発に向けての試行錯誤が続きます
高橋医院