線維化には
前回紹介した以外のさまざまな因子も関与します

<マクロファージ>

@線維化の維持 分解の各過程に影響を及ぼします

*ECMのリモデリングによる直接的作用
*活性化された筋線維芽細胞の制御による間接的作用
によりますが

こうした作用には
マクロファージが産生するTGF-β PDGFなどサイトカインが
関与します

強力な線維化活性化因子であるTGF-βを産生して
線維化を促進しますが

一方で
デブリ ECMの分解 
TNF-α産生による組織修復の促進
などにより 線維化の修復も行います


マクロファージによる線維化の促進 修復についてまとめた図

マクロファージには
*組織常在性マクロファージ
*骨髄由来マクロファージ
という起源が異なる2種類がありますが

最近は M1 M2という
機能が異なるサブポピュレーションが同定されています

@サブポピュレーション

*M1マクロファージ

向炎症性
炎症が起こると
IL-4 IL-13 MCSF CCL17 CCL2
などの働きにより 周囲に線維化反応を起こします

また さまざまなサイトカインを産生して
筋線維芽細胞を活性化します

M2マクロファージ

抗炎症性
筋線維芽細胞の分化を抑制し ECMを分解します

M2マクロファージによる
*MMP1 2 8 9 13の産生
アポトーシスを起こした実質細胞の貪食
IL-10産生
などが 線維化抑制に関わります

M1 M2マクロファージの作用の差異をまとめた図

こうした
M1 M2サブポピュレーションの比率の変化により
線維化促進 分解の方向性が規定されます

M1 M2マクロファージの線維芽細胞への作用の差異をまとめた図


このようにマクロファージは
サブポピュレーションや 作用の質的差異により
線維化の促進にも抑制にも関わります

動物モデルでは
マクロファージの除去により
線維化増悪 組織修復の遅延が認められるので
生体内では線維化抑制的な働きをしていると考えられています


<脂質代謝の関連>

@レチノイド

肺 肝の線維芽細胞
レチノイドを含む脂肪滴を豊富に有していますが
活性化により脂肪滴の含有量は減少します

この現象が
線維芽細胞の活性化や
線維化そのものにどのように関わるか
興味が持たれています


@脂質代謝制御転写因子

脂質代謝を制御する
Srebf1 PPARα PPARγなどの転写因子の増強は
TGF-β作用の抑制を介して線維芽細胞活性化を抑制する
という興味深い現象も明らかにされています

脂質代謝制御転写因子による線維芽細胞活性化の抑制についてまとめた図

線維化に脂質代謝がどう関与するか
未だ詳細は明らかにされていませんが
興味深いところです


<各臓器のECM産生細胞>

線維化が生じる諸臓器には
その臓器に特有なECM産生細胞が存在し
線維化に関わっています

@肝臓

HSCが中心的役割を果たしていますが

Portal myofibroblasts
常在線維芽細胞
血管平滑筋細胞
骨髄由来筋線維芽細胞前駆細胞
肝細胞 胆管細胞のEMT
類洞内皮細胞
中皮細胞
MSC
なども関与します

@腎臓

尿細管内皮細胞
上皮細胞
骨髄由来MSC
常在線維芽細胞
Pericytes
PodocytesのEMT
MSC
などが関与します

@肺

常在線維芽細胞
骨髄由来間葉系前駆細胞
Pericytes
肺胞上皮細胞のEMT
内皮細胞のEndoMT
MSC
などが関与します

@心臓

常在線維芽細胞
Cardiomyocytes
骨髄由来線維芽細胞
上皮細胞 血管内皮細胞
MSC
などが関与します

@皮膚

常在線維芽細胞
Pericytes
Fibrocytes
Stromal cells
などが関与します

それぞれの臓器で
どの細胞が主にECM産生や線維化に関わっているか
その詳細は不明です

このように線維化は複雑で
未だに不明な点が数多くあります
高橋医院