新型コロナ・GWASでも明らかにされた新型コロナウイルスと血液型の関連
新型コロナウイルスと血液型の関連について 紹介してきましたが 正直言って 血液型と病気の関連は どうも胡散臭い感じもあったのですが 人種を超えて同じような結果が報告されると そうなのかな~という気もしていました ところが 6/19に 胡散臭さを完全に取っ払う研究が 世界で最も権威のあるNEJMに掲載されたのですよ! スペイン イタリアの新型コロナウイルス患者で 1610人の呼吸不全を示す重症例と 2205人の健常人・軽症者を対象に 858万3千カ所のSNPを検討するGWAS解析が行われました GWAS解析は 以前も説明しましたが 全てのゲノムの中の 一遺伝子多型・SNPを示す遺伝子が 病気の人と健常人で異なるかどうかを解析するものです 一遺伝子多型・SNPは 遺伝子の個人的な個性を示すもので SNPによる遺伝子的個性・体質の違いは 作られるタンパク質の 質的・量的変化となって表れてくるので 病気の原因につながることが少なくない 多くの病気でGWAS解析が行われ 病気の原因を検索しようと試みられています ですから これまで報告されてきた 患者さんと健常人を血液型で分類して どの血液型が 新型コロナウイルスに罹りやすいか 重症化しやすいかを 明らかにする検討とは 意味合いが全く異なります で このGWAS解析で 新型コロナウイルスに感染して重症になる人が有していて 健常な人や軽症者は有していないSNPを有する遺伝子が ふたつ明らかになりました そのひとつが なんと 9番染色体に存在する 血液型の決定に関連する遺伝子だったのですよ! そして 血液型A型の人は A型でない人に比べ 重症化リスクが1.45倍高く 血液型O型の人は O型でない人に比べ 重症化リスクが0.65倍低い ことが明らかにされました ビックリ~!! こんなデータを しかもNEJMで示されると 血液型と新型コロナウイルスの関連は眉唾だなんて 言っていられなくなりました(苦笑) この現象が どのように生じてくるのか? 前回 紹介したような機序によるのか それとも全く別のメカニズムによるのか? 興味深いところです ちなみに もうひとつの 重症になる人が有していて 健常な人や軽症者は有していないSNPを有する遺伝子群は 3番染色体の3p21.31に存在する SLC6A20 LZTFL1 FYCO1 XCR1 CCR9 CXCR6 の6つの遺伝子で これらの遺伝子のSNPを有していると 重症化リスクは1.56倍高くなります 実際に患者さんの肺細胞では CXCR6の発現低下 SLC6A20の発現増強 LZTFL1の強い発現増強 が認められているそうです SLC6A20は 新型コロナウイルスが細胞に感染するときに 受容体として用いられるACE2と 機能的に関連するSIT1という トランスポーターの遺伝子なので 感染しやすさに関係している可能性があります またCCR9 CXCR6は 炎症に関与する免疫細胞を 呼び寄せる働きがあるケモカインなので 重症化に関与する可能性があります うーん イタリア スペインチーム やりますねえ! しかもGWASで釣ってこられた遺伝子が 血液型 ACE2関連 免疫関連の遺伝子というのは 実に面白い結果でした 日本でも なぜ日本人では新型コロナウイルスによる死亡者が少ないのか その理由となるファクターXを探す健闘で GWAS研究が開始されていると聞きましたが どんな結果が出るか楽しみです!
高橋医院