新型コロナウイルスの消毒に用いる
「次亜塩素酸水」と
「次亜塩素酸ナトリウム」について
混同されている方が少なくないようです

よくある勘違いは

*次亜塩素酸ナトリウムを水に溶かせば 
 次亜塩素酸水になる

*次亜塩素酸ナトリウムを噴霧すると効果がある

といったものですが

次亜塩素酸水 と 次亜塩素酸ナトリウム は違います!

次亜塩素酸水と次亜塩素酸ナトリウムの違いを強調するポスター

それぞれについて 説明します

@次亜塩素酸水とは?

次亜塩素酸水は
次亜塩素酸を主成分とする 酸性の溶液
ラジカルによる酸化作用が強く 反応性が高いので
消毒に用いられます

次亜塩素酸水の消毒作用を説明する図

次亜塩素酸水の酸化作用を示す図


@作り方

専用の装置(隔膜がある電解槽)を使用し
0.2%以下の濃度の
薄い塩化ナトリウム水溶液(食塩水)を
電気分解することにより得られます

陽極側に 次亜塩素酸が生成され
それを主成分とする次亜塩素酸水が作られます

次亜塩素酸水の作り方を示す図


@用途

食品加工等で
洗浄・消毒用に使用される食品添加物(殺菌料)で
食品加工工場における野菜の洗浄などに使われます


@注意事項

*塩素に過敏な方は使用を控えてください

*目に入ったり 皮膚についたりしないよう
 注意してください

*飲み込んだり 吸い込んだりしないよう
 注意してください

*不安定な物質のため
 冷暗所に保管し 早めに使い切りましょう


@新型コロナウイルスへの効果

酸化作用により
新型コロナウイルスを破壊し 無毒化するとされ
テーブル ドアノブなどの消毒には
一部の次亜塩素酸水も有効とされています

次亜塩素酸水でドアノブを消毒している様子

実際に 
除菌や抗菌効果があるとするスプレーなどに
次亜塩素酸水が含まれることが多いです

次亜塩素酸水のスプレー


@次亜塩素酸水の空間への噴霧は効果があるのか?

世界保健機関・WHOは
「消毒剤を人体に噴霧することは
 いかなる状況であっても推奨されない」
との見解を発表し

次亜塩素酸水は あくまで
生成装置から物品にかけ流すのが
一般的な使い方であると指摘しています


厚労省は 次亜塩素酸水の空間噴霧について

次亜塩素酸水の空間噴霧で
付着ウイルスや空気中の浮遊ウイルスを除去できるかは
メーカー等が工夫を凝らして試験をしていますが
国際的に評価方法は確立されていません

と発表し

消毒効果を有する濃度の次亜塩素酸水を
吸いこむことは推奨できません
空間噴霧は無人の時間帯に行うなど
人が吸入しないような注意が必要です

と 警鐘を鳴らしています


@実際に次亜塩素酸水を使う機会は少ない?

次亜塩素酸水は不安定な物質なので
保存の仕方次第で
すぐに効果が失われてしまいます

要するに 作ってすぐに使わないとあまり意味がない

また 家庭で次亜塩素酸水を作る場合には
塩素が発生するリスクがあり危険です

ですから
実際に次亜塩素酸水を使う機会は
少ないと思われます

次亜塩素酸水のリスクについて説明する表

@当院での次亜塩素酸水を用いた取り組み

当院では
通常の診察室と異なる場所に
かぜ症状の患者さんを診察するスペースを設け
そこには
生成したばかりの次亜塩素酸水を超音波式で噴霧する
ジアイーノという機械を設置してあります

ジアイーノという機械

三重大学教授で
洗浄・殺菌工学 界面化学 廃水処理工学を専門とされる
福崎智司先生は

次亜塩素酸水を超音波式で噴霧した微細粒子が
微生物やウイルスに接触すれば
必ず除菌効果が出ると報告されています

そして ジアイーノで用いている方法で噴霧すると
人が着座した状態や起立した状態で
顔の位置にくる次亜塩素酸はほぼゼロで
吸入する心配はありません

一方で 床付近では
一定の次亜塩素酸の濃度が保たれます

一般に 浮遊しているウイルスは
換気をすれば ある程度希釈されて薄まりますが
床付近に多く存在するウイルスは
換気だけで完全に室外に出すのは困難です

そこで次亜塩素酸水を超音波式で噴霧すれば
床近くに浮遊するウイルスや近くに付着したウイルスを
排除することができると考えられます

このように 人に害を与えない形で
ウイルスが存在する可能性があるエリアで
次亜塩素酸水を用いたウイルス対処を行っています
高橋医院