このところNHKは頻繁に
新型コロナウイルスに関するスペシャル番組を企画していて
かなり面白いものもあるので楽しみにしています

6/27には NHKスペシャルで

「新型コロナウイルス・危機は繰り返されるのか
 パンデミックの行方」

という番組が放映され

NHKスペシャルの番組の宣伝

厳格なロックダウンを経て
経済・社会に深刻なダメージを受けたヨーロッパで
感染拡大の防止と経済の両立を
いかに図っていくかがレポートされていました


<感染防御か 経済活動か?>

Withコロナ時代の社会で
感染防御と経済活性化のバランスを
どのようにとっていくかは
本当に大きな問題になっています

日本でも 緊急事態宣言が出され
他者との接触を8割減らしましょうと指針が示されて
多くの人たちがそれに従ったら
感染者はしっかりと減少してきました

接触の8割削減を勧めるプスター

でも 経済活動は大打撃を受けて
飲食業などを筆頭に 多くの人たちが
経済的に苦しむ状況になってしまいました

自粛による経済活動の打撃を示すグラフ
そして 自粛が解除されると
経済活動は少し盛り返してきましたが
今度は感染者数が再び上昇傾向にあります

同じようなことは
アメリカでもヨーロッパでも起こっています


極端な言葉遣いをすれば
コロナで死ぬか 経済で死ぬか
ということです

コロナと経済のバランスを示す図

まさに 難しく 悩ましい問題です


<両方をうまく成り立たせるために>

ここで興味深かったのが
ドイツからのレポートでした

実行再生産数・Rtを0.75にすれば
感染を制御できるし 経済の打撃も少なくてすむ
というのです

ドイツからのレポート


実行再生産数・Rtは
実際にウイルス感染が起こっている社会で
ひとりの感染者が何人にうつすかを示す指標です

ドイツでは3月にRtが3を超えて
感染の拡大が激しかったため
経済活動を厳しく制限したところ
Rtは1以下になりましたが
その代り経済は大打撃を被りました

感染症の専門家は
感染制御だけを考えれば
ロックダウンを継続した方が良いと言うし

経済学者は
ロックダウンを早期に全面解除しないと
経済が成り立たなくなると主張する


そこで
感染制御と経済の両方をうまく成り立たせるために
国を代表する感染症研究者と経済学者が
共同でシュミュレーションをしたそうです

すると Rt=1だと
経済活動は維持できるけれど
感染収束には1年以上かかり
GDPは7.7%減少する

Rt=1のときの感染収束 経済活動を示す図

Rt=0.1にするためには
非常に厳しい外出制限が必要となり
GDPはマイナス9.2%にもなる

Rt=0.1のときの感染収束 経済活動を示す図

Rt=0.5だと GDPはマイナス6.1%
Rt=0.9だと GDPはマイナス5.1%

そして なんと
Rt=0.75だと GDPはマイナス4.6%と
経済への影響がいちばん少なくてすむそうで

ある程度 経済活動を抑えた方が
最終的な経済損失は 最も少なくてすみ
感染も早期収束できると予測されるそうです

Rt=0.75のときの感染収束 経済活動を示す図


この結果には 経済学者さんも
経済にとっては再開が早ければ早いほどよく
Rtは1以上に緩めるべきと考えていたので
とても驚いたそうです

書き手もビックリしました

どのようなシュミュレーションが行われたのか
とても興味深いですが
微妙な“おとしどころ”があるのですね!


<Withコロナ時代の社会の在り方の模索>

番組では
専門家委員会をまとめられていた尾身先生が

Withコロナの時代には
どの程度の感染を許し どの程度の経済活動自粛を行うか
多くの異なる分野の専門家が集まって
コンセンサスを作っていかないとならない

とコメントされていました

これからは
感染制御と経済活動のどちらかだけでなく
両方を考慮した検討が大切になっていくのでしょう

コメントする尾身先生

では 具体的に
例えば どのように経済活動をアレンジして
Rt=0.75に近づけていくか
とても興味深いです

社会全体で考えていくべきことだと思います
高橋医院