新型コロナ・エアロゾル感染をどう防ぐか?
新型コロナウイルスのエアロゾル感染について 7月に新たな動きがありました <エアロゾル感染に関するWHOへの意見提出> 7/6に オーストラリアなどの研究者らが 新型コロナウイルスが 空気を媒介にした感染をするという証拠は 出そろっているので それを前提にした防護策に取り組むべき とする論文を発表し WHOに勧告する意見提出を行いました この論文には 長期間にわたりウイルスの空気感染を研究してきた 世界32ヶ国の科学者239人が賛同しています この勧告では 新型コロナウイルスを含んだ小さい飛沫は 長時間にわたって空気中を漂い 遠くまで運ばれる と強調しています WHOがこれまでに勧めてきた 手洗い ソーシャルディスタンスの確保は もちろん適切な対処ですが 感染者が空中に放つ ウイルスを含んだ微小な飛沫からの保護には不十分とし *公共の建物 職場 学校 病院 介護施設における 適切な換気の実施 *これを補う空気濾過フィルターや殺菌性紫外線など 空気から汚染物質を除去する装置の導入 *特に公共交通機関や公共の建物では 過密を避ける といった注意を勧めています <WHOの見解> この意見提出を受けて WHOは7/9にガイダンスを改訂しました この改訂で 新型コロナウイルスの主な感染経路は *咳やくしゃみなどの飛沫感染か *物の表面を触った手にウイルスが付き 鼻や口に伝わる接触感染 であることは間違いなく 従来通りの *人混みを避ける *室内の空気の入れ替え *ソーシャル・ディスタンシング *それが難しい場合のマスク着用 を奨励しましたが 空気中の微粒子が ある程度の距離を漂って感染を起こす 空気感染について 換気が不充分な空間など 一定の環境で発生する可能性を排除できない とする見解を示しました 具体的には 合唱の練習 レストラン フィットネスジム といった場所で 混雑して換気が悪いなどの特定の室内環境で 感染者と長時間一緒にいた場合に 近い距離の空気感染が起こる可能性を排除できない と 指摘しました そして 新型コロナウイルスが空気感染すると 再定義するには至っていないが そのような事例を調査し 新型コロナウイルス感染症の 感染における意義を評価するために さらなる調査を緊急に要する と認めました ただ エアロゾルが感染に果たす役割について 一段の研究が必要との認識を示しています アメリカ国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長は こうした動きを受けて 新型コロナウイルスのエアロゾル感染を示す 確たる証拠は多くないが 実際に起きていると考えるのが妥当だとした上で 症状がない人も含めマスク着用が重要だ と強調しています <エアロゾル感染への対処策> 新型コロナウイルスがエアロゾル感染するなら 現在の対策では不十分かもしれません つまり 物体の表面を何度も消毒することよりも 換気や空気清浄の優先度を 高めねばならない可能性があり より積極的な換気や紫外線殺菌などが 必要になると考えられます では どのような対策をとるべきなのでしょう? @換気の徹底 室内換気の重要性は ウイルスを含むエアロゾルを外界へ排出し 空気中の密度を希釈して 感染リスクを下げるために推奨されてきましたが 今後は 換気の優先順位を上げる必要があると考えられます @エアロゾル感染が起こりやすい場所を避ける 感染者が ある場所に滞在して エアロゾル化したウイルスを排出する時間が長いほど 空中のウイルス濃度が上がり 広く拡散します また 屋内の空間に出入りする人数が多いほど 感染者がそこに現れる確率は上がり 感染者が過ごす時間が長いほど その場所の空気中のウイルス濃度は高くなります したがって 飲食店 バー オフィス 教室 教会など 多くの人が何時間も集まる場所は エアロゾル感染の危険が高くなります そうした場所では 消毒液で物の表面をきれいに拭き 全員がマスクをするだけでは不十分かもしれず 中に入れる人数を常時減らすだけでなく その場所で過ごす時間も減らす必要があるでしょう @紫外線 紫外線の存在下では エアロゾル化粒子が1分もかからずに消滅します そこで 複数の企業が 病室 ショッピングモール 店舗 公共交通機関の駅などを 消毒するために 紫外線装置を備えたロボットを配置し始めています 当院でも 新型コロナウイルス感染疑いの患者さんを 診察するスペースでは 紫外線消毒を行っています また エアロゾル感染には 個人差もあれば 環境要因も大きく影響します どれだけの量のエアロゾルを吸い込めば 新型コロナウイルスに感染するかなどわかっておらず 新たな知見の蓄積が期待されています
高橋医院