昨日ご紹介したように
集団免疫かロックダウンかという議論がなされている状況を鑑み
WHOは昨年10/15に
集団免疫とロックダウンに関するコメントを発表しました

<WHOのコメント>

WHOのコメント

@集団免疫に関して

ワクチンにより多くの人がウイルスに抵抗力を持つようになれば
集団免疫が成立して社会全体がウイルスに打ち勝てると
集団免疫という手法の有効性を認めつつも

集団免疫獲得のために 敢えて人々に感染を許すのは
不必要な感染 感染死を招くことになるので
科学的にも倫理的にも問題である
と指摘します

確かに高齢者やリスク因子のある人は重症化しやすいが
そうでなくても重症化する人もいることは明らかだし
たとえ軽症ですんでも
感染後の長期間に及ぶ健康被害が起こるリスクもある

また 新型コロナウイルスに対する免疫反応が
感染防御に充分なほど強いのか
どれくらいの期間持続するかも
わかっていない

世界での感染者数は10%以下で
多くの人は感染のリスクがあるので
不必要な感染は避けなければならない

と 集団免疫推進論に「待った」をかけます


@ロックダウンに関して

春にヨーロッパなどで行われたロックダウンにより
人々のコンタクトの制限により
感染を抑制できることが判明したけれど

ロックダウンは 
個人の生活 社会活動 経済活動などに
さまざまな悪影響を及ぼすことも明らかになった

感染のアウトブレイクを起こさせないために
状況によりロックダウンをせざるを得ないことは
仕方ないけれど

そうならないようにするためにも
各国政府は可能な限り 従来行われてきた感染防御策を
徹底的に行うべきである

と結論しています


<集団免疫の概念は誤解されている>

一方 3月にイギリスが最初に集団免疫獲得政策をとったとき
その判断に影響を及ぼしたとされるMedley博士は
10/22のLancetに
「集団免疫は誤解されている」
という意見を発表しました

集団免疫の概念は誤解されているという趣旨の論文

集団免疫は
自然に広まる感染かワクチン接種により誘導される現象だが

最近 提唱されている
高リスク者を隔離しながら 低リスク者に感染を広めて
集団免疫を成立させようとする方針は
概念的には可能だが 実現は困難だ

従来行われてきた感染防御策の徹底が一番大切で
「ロックダウンか 自由に感染させるか」
ということが争点になると
適切な感染防御策をとれなくなってしまう
と警告しています


さて どうすればいいのでしょう?

書き手は正直言って
選択的防御をともなう集団免疫推進論に
賛同する気持ちもありますが
でも専門家が「実現は困難」と言われているので
絵にかいた餅なのかもしれません

日々の診療で
さまざまな職種の患者さんたちから
いかに経済的状況が厳しいかをうかがっていると
ロックダウンなどにともなう悪影響は避けないと
経済 社会が成り立たなくなると危惧もします

しかし
新型コロナウイルスに対する免疫応答は
不確実な部分があることは否定できず
さらにLong COVIDの心配もあるので
不必要な感染は避けなければならない
という主張も納得できます

本当に難しいところです

月並みな意見で恐縮ですが
集団免疫推進論者も 反対論者も
ともに語っているように
ロックダウンをせざるを得ない状況にさせないために
日常生活で地道な対策を行っていくしか
手がないのかと思います

まだしばらく そうした状況が続きそうですね

今 発布されている緊急事態宣言が
うまく機能することを願うばかりですが
難しいかな、、、

 

高橋医院